第13 第5段第6の一書と古事記との関係 |
古事記よりも日本書紀が先に成立したのではないか さてここで,日本書紀第5段第6の一書と古事記との関係を考えておきましょう。考えられるケースは,以下のとおりでしょう。 @ 日本書紀編纂者が古事記を見て,それを第6の一書という異伝として残した。すなわち第6の一書は古事記を指している。 まず,@はありえません。たとえば古事記では,現世に帰ろうとする伊邪那美命が,黄泉神と協議してくると述べます。しかし第6の一書にそんな叙述はありません。省略せず,こと細かに掲載した第6の一書の細部は,古事記と大きく異なっています。ですから,日本書紀編纂者が古事記を読んで,第6の一書として残したということはあり得ません。 Bはどうでしょうか。Bは,日本書紀編纂者と古事記ライターが,まったく同じ原伝承を見ていることを前提としています。ところが,その結果できあがった第6の一書と古事記は,話の大筋,展開としては一致していますが,細部はまったく異なります。伊邪那美命の頭や胸にいたとされる雷神の描写など,古事記にあって第6の一書にはないものがあります。まったく同じ原伝承を見てそれぞれ勝手に著述したのであれば,こうも違わないでしょう。 結局Aが残るのです。古事記は712年の成立,日本書紀は720年の成立。8年の差など,国家的事業にとっては同時代です。古事記ライターは,長い年月がかかった日本書紀の編纂を知っていたはずです。第6の一書の原伝承はもとより,第6の一書自体も知っていたはずです。
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