たくさんの夜店。

くるっと回りを見回したあたしの目に飛び込んできたのは、射的。
その景品の棚に、大きなティガーのぬいぐるみを発見して、あたしは思わず叫んでた。


「あれー!!あれ欲しいっ!!」
「え?どれ?」


あたしの唐突な大声にも動じないで、サエちゃんが訊き返してくる。
お目当てのティガーを真っ直ぐ指差したら、サエちゃんと亮ちゃんがふぅん、と目を合わせて楽しげに笑った。
二人の顔を交互に見上げたあたしの視界で、二人は同時に浴衣の袂からお財布を取り出して。


「亮、勝負しよっか」
「いいけど、サエには負けないよ」
「ふ、二人とも?」
「行くよ、
「クスクス、たまにはこういうのもいいよね」


笑いながら歩き出した二人を見て戸惑うあたしの頬に、いきなり冷たい何かが当たって、びっくりして振り向いたらいっちゃんがイチゴのとメロンのカキ氷を持って立ってた。
さっき当たった冷たいものはカキ氷の入れ物だったのか。
いっちゃんは両手にかき氷を持ったまま、射的にむかうサエちゃんと亮ちゃんの背中を見ながら歩き出した。
慌ててその横に並んだら、いっちゃんは思い出したようにカキ氷を二つとも、あたしの方に差し出して。


、どっちがいい?」
「もらっていいの?」
「俺一人で二つは無理だもんね」
「んっとね、じゃあイチゴ!」
「はいなのね」


赤い氷の山、ストロースプーンでつついて崩しながら、いっちゃんと並んで歩く。
射的の屋台に到着すると、一足先に来てたサエちゃんと亮ちゃんが、お店のお兄ちゃんにお金を払って、同時にライフルを構えたところだった。
1回10発300円の射的台、あたしが欲しがってたティガーは、笑顔のとウインクしてるのと二匹いて。
サエちゃんは笑顔の、亮ちゃんがウインクしてるのを狙って、引き金を引く。


パン!パン!と小気味良く響くライフルの発射音を聞きながらカキ氷を食べていたら。
もう入れ物を半分くらい空にしたいっちゃんが、あたしの肩をとんとんと叩いた。
なんだろうと思って振り向いたら、いっちゃんはニコニコ笑ってベーっと舌を出した。


「俺の舌ミドリ〜」
「あっはははは!やーだーもう、いっちゃんてばーっ」
「妖怪の舌ってこんなかね?」
「知らないよー!あ、あたしの舌ピンク?」


いっちゃんをならってベーっと舌を出したら、いっちゃんは笑って。


「真っ赤なのねー」
「お化けの舌ー」
『あははははは!』


二人揃って笑ったところに、ライフルの音がまたも響いて。
射的屋のお兄ちゃんの持ってるハンドベル(ベルってゆーより鐘?)が、景気よくガランガランガラン、と鳴った。


「ハイ、二人ともぬいぐるみねー!」
「え?ええーっ!?」
「あれ、ほぼ同時?」
「……だったなぁ」


構えたライフルを下ろして呟くサエちゃんと亮ちゃんに、ティガーが一匹ずつ渡された。
二人はさっきみたいに顔を見合わせて笑って。
射的屋のお兄ちゃんに手を振ってこっちに戻ってくると、同時にあたしに向かって二匹のティガーを突き出した。


『ハイ、
「……あたしが貰っていいの!?」
「いいも何も、のために取ったんだし」
「ていうか、俺たちがこんなの後生大事に抱えて歩いてたら、可笑しいと思う」
「あ、ありがと!!」


ふっかふかのぬいぐるみ、二匹。
ぎゅっと抱きしめてお礼を言ったら。
サエちゃんと亮ちゃんは、何だかとても満足げに笑った。





















それから、金魚すくいやヨーヨー釣りなんかもやって、遊びたおして。
やっと神社の社殿にたどり着いた時、タイミングを図ったように、ドォン!と大きな音がした。











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