(1)1997年 アメリカ(1/2)

Date
97.10.30
Flight No.
AA128
Aircraft Type(Registration No.)
MD-11(???)
Route
NRT-SJC

1.プロローグ

いつもと変わらぬ会社生活を送っていたある日のこと。私は急きょ10日ばかりアメリカに出張することになった。ここのところ日本から出たことのなかった、飛行機を怖がっていた私が渡米することになった。私が入社して以来、幾度か出張は行ったことはあったが、海外出張は勿論、宿泊を伴う出張は初めてである。

海外へ出かけるのは、10年程前に家族で香港へ行ったきり、飛行機に乗るのは確か5-6年前に家族で国内を旅行して以来である。私自身、飛行機自体は乗ると好きになってしまい、非常に興味津津になって本などを読み漁ったりするのであるが、実際に乗るとなると、恐怖感が走ってしまい、好きだけど乗るのは嫌だ、という状態になるのである。それで家族旅行の行き先を決めるとなると、両親は飛行機を利用したがるのであるが、私はいつも飛行機というといやいやな顔をしてしまい列車がいいというので、これでいつもケンカになってしまうのである。私がこう思うには、飛行機に乗ると離陸前に必ず非常設備の説明が行われるが、これを見てしまうと万が一の時のことを頭の中で想像してしまい、怖くなってしまうのかもしれない。でも、これは仕事だ、そんなことは言っていられない。という訳で何も考えないようにした。そう事故は滅多に起こるものではない、と思いながら。

この話が出てから出発まで1週間しかない。そんなことを考えてる余裕もなかった。それに海外なんぞここのところ出かけたこともなかったのでパスポートもない。旅券の緊急交付の方法もあるというので、周囲の人達にアドバイスを受けながら手配をすすめた。スーツケースも購入し、なんとか出発までに間に合うことができた。

NRTまでの交通はどうするのか、と聞かれて何も考えてなかった。今でこそ私はNEXがあるとかなにがあるとかわかるようになってきたが、出発前の私の頭の中は準備の他に、今まで続けてきた業務も勿論、進めなければならない。前に家族で香港へ行ったことがあるというものの、その当時と状況が違うし、だいぶ昔のことなので忘れている。もう、これは初心者状態なのだ。課内に海外渡航経験者がいたので、その方に聞いたところ、NEXの存在を知り、出発の前日、切符の手配をした。

2.NRT

今回利用するアメリカン(以下AALまたはAAと記述)は第1ターミナル発着である。第1ターミナルは本当の昔の成田の雰囲気がする。非常になつかしく感じた。家族で旅行するときは何故か第1だったような気がする。

AALのカウンタでチェックインを行う。いつもツアーだったので、こうした作業を自分自身で行うのも初めてである。この日の便は結構混んでいるようで、自分達の番が回って来るまでにだいぶ時間がかかったような気がする。今回は席については何も考えていなかったので、カウンタにおまかせした。で、割り当てられた席は30J。窓側であった。

私の後、同行した上長がチェックイン。上長はどうやら追加料金を払ってもアップグレード可能かという交渉をしていたようだが、この日は満席のため不可、ということであった。

出国手続きのあと、税関からの注意ということで偽物ブランドの持ち込みについての展示があった。こういうものは折角日本まで持ってきても、税関で没収されてしまうのだそうだ。どうやら、偽物は本物よりマークが大きかったりするケースが多いらしい。「こういう風に並べられると、はっきりと偽物クサいものはそうだとわかるけどね」などと言いながら、ゲートへと向かった。

AA128は当初予定されていた18:15より遅れて18:45出発になるとのこと。搭乗時間までの間、だいぶ間があったので上長とこまごまとお話をうかがった。上長の海外経験の話、出張の話、新婚旅行の思い出etc.。上長はそうしてる間にタバコ休憩になった。これから9時間あまり、タバコは吸えない。ここで吸い溜めしておく必要があるようだ。ヘビースモーカーにとって長時間の禁煙はつらいかもしれない。

搭乗の時間になり、エコノミーの客も機内に入ることになった。
ツアー客らしき集団がごそごそと搭乗。出発前にサンノゼについてちょっと調べて見たが、そんなに一般受けする観光地はあるような様子がない。こんな便にツアー客など乗るのだろうか、と疑問に思った。 (もしかしたら、サンフランシスコに行くのにサンノゼからバスとか、乗り継いで他の場所へ行くのかもしれない)自分達も搭乗する。

3.機内

離陸後、しばらくして機内食のサービスが始まった。この日のメニューは3種類からの選択だった。どうやらパスタが自分の食べたい感じだったので、それを選択。ところが、どうやらそれはベジタリアンみたいな感じで、食べてみると豆腐か何かを詰めた感じ。しまった!メニューを見たら海老のカレーとかあったので、別のものを選べば良かった!!
機内食は到着前に朝食に甘いパンが出たが、これは非常においしかった。夕食に選択したものが自分の口に合わなかったということだろう。

私の隣の席の女性はどうやら留学に行くような感じで、TOEFLか何かのテキストを取り出しては勉強している。これを見ると、自分も英語を勉強しなくては、そんな気になるのだが、実行はなかなか難しい。いけない!
そのうち、隣の女性は眠ってしまった。私自身も到着後、すぐ仕事なので寝なければいけないのだが、ジェット音がうるさいのと興奮してしまって眠れない。眠ってる状態と起きてる状態が交互にやって来る。通路に出ようと思っても、隣がすやすや眠ってるので、そう簡単に出られるものではない。窓側は景色が楽しめる、寝る時は壁に頭をつけられる、といったメリットはあるが、こういう時は困ってしまうのだ。外の景色を見たいと思っても、隣で寝ているところに光が洩れてきては迷惑になるし。通路に出ようと思って、やっとのことで出たと思ったら、枕が床に転がってしまった。

で、再び席に戻って来ると枕がない!!もうこれは焦った。で、枕がないので枕を持ってきてもらうことにした。ところが、枕を英語で何と言うか思い出せない。で、日本語の分かるクルーを呼んでもらい、説明した。「枕でございますね」持ってきてくれたが、非常に申し訳なかった。もしかしたら、床に転がってしまった枕、クルーの方が片付けてしまったのかもしれない。迷惑をかけてしまった。

トイレの表記についても、空きがvacantで使用中がoccupiedなのであるが、最近飛行機に乗っていなかった私に取ってはさあ、このトイレって空いてるんだろうか、と真剣に悩んでしまった。それを見ていたクルーが「空いてるよ」「使用中だよ」と教えてくれたものの、初めて飛行機に乗る場合や英語に弱い乗客にとってはそれだけではわかりにくいような感じがした。それを知らなかった私も赤っ恥だが、もう少し改善できないのかとも思う。

私の飛行機搭乗の楽しみであるフライトログをお願いすることにした。手帳を渡し「搭乗の記念に」とお願いすると、「何か(お客様の方で)記入することはありませんか?」と聞かれたので、「特にありません」。で、たまたまトイレに行った時にギャレーのそばを通ると例の手帳が壁にガムテープで貼り付けてあったのには驚きを感じた。これは、忘れないように目立つところに置いとく、という意味だろうが、こういう大胆な発想は私には思い付かない。よくアメリカの航空会社のクルーはおおざっぱとか大胆とか評されるようだが、そういう部分を感じさせてしまう。

着陸前にAALのサービスに関するアンケートが乗客全員に回ってきた。いろいろと書くことはあるが、とにかく着陸前だったので時間がない。乗客にコメントを求め、改善していこうとする姿勢は評価できるが、いろいろ意見を聞こうと思ったら、もう少し時間がほしいところである。時間がない状態でなかなか落ち着いてコメントが書けない、そう感じさせられるアンケートだった。

4.SJC

成田から約10時間余りのフライトを終え、サンノゼに到着。私にとっては初めての太平洋越えである。機内でよく眠れなかったこともあり、かなりきつい。着陸前、窓から町並みを見ると、かなり乾燥した場所のようだ。砂漠とは言わないまでも、砂埃でまみれた感じに見える。カリフォルニアの青い空、その通りである。しかも、日本の11月と比べるとかなり暖かい、むしろ暑いくらいである。
タラップで飛行機を降り、そのまま入国審査場へ。とは言っても、SJCの入国審査場はまるでほったて小屋のような感じ。AA128の搭乗客で一杯になりそうだ。ここで、AALの係員の方が入国関連の書類をチェックしてくれるのだが、私達の場合は日本を出る前に会社の方で記入されたものを用意してくれたためか、書類にサインをするのを忘れていて、それを指摘された。ということで、慌ててサインをして自分の番が来るのを待った。

「入国の目的は?」
「ビジネスでです」
「会社の名前は?」
「××です」
「持ち込み物の中にmaterial(これは確か、コンピュータの基板とかだったかと思う)はないか?」
「ないです」

などと審査官とのやりとりが続いた後、荷物を取りに向かった。

預け入れ手荷物の受渡し場へ向かったところ、引渡しは通常見られるターンテーブルでなく、直接荷物をもらう感じだった(と思った。)その後、SJCにターンテーブルがあるのを見つけたが、今回は誰も使ってる様子はない。飛行機の預け入れ手荷物の引渡しというと、通常はターンテーブルを想像してしまうし、今までもずっとそうだったので、これは珍しかった。もしかしたら、SJCで降りてしまう人はそれだけ少なかったのだろうか???
引き渡された荷物をチェックしてみると、スーツケースのはしがへこんでいることに気づいた。よく航空会社に預けた荷物は乱暴に扱われるので、あちこちがへこむケースがあるとの話は聞いていたが、自分がそうなるとは思わなかった。AALに苦情を言おうとも思ったが、語学に自信がなかったこと、このあと職場の方へ行かなければならないこと、へこんだくらいならそう差し支えのないものであったことから、苦情を言うのをやめた。新調したスーツケースだったが、そんな高いものではないし、まあいいや。それに、へこんでいると目印になってかえって便利かも。そう思うことにした。

空港のまわりはやはりというか、タクシーの客引きがうろうろしていた。オフィスへ向かうにはタクシーに乗るしかなかったが、海外でタクシーに纏わるトラブルを考えるとやはり緊張する。しかも、空港の回りもそう人がいないではないか。
こうして、上長と私はタクシーで出張中の職場になる現地オフィスへ向かった。


航空旅行記目次
(1)1997年 アメリカ(2/2)