(3)1999年 シンガポール(1/2)

Date
99.2.12
Flight No.
SQ11
Aircraft Type(Registration No.)
B747-412(9V-SMF)
Route
NRT-SIN

1.プロローグ

98年のイタリア旅行以降、またどこかへ行きたいという要求が高まっていた。 また、月刊エアライン誌やその他旅行雑誌でシンガポール航空(以下、SIAまたは SQと表記)の評判がめちゃくちゃにいいのを聞き、これは何としても乗りたいと 思った。その一方でイタリア旅行に利用したキャセイ(CPA)も非常に良かったこと、 更に香港に新空港ができたこと、スポッタにとっては「聖地」であるLHRも前回 はトランジットでちょっとしか見れなかったので、今度はじっくり楽しみたい、 ということがあって、CPAでロンドンに行こうか、それともSIAでどこか別の場所 に行こうか悩んでいた。

夏休みやお正月休み、GWは旅行代金が高くなってしまうので、何とかこの時期を 避けて旅行できないかと思いながら会社のカレンダをチェックすると、2/11から 14まで4連休があるのを見つけた。これに休みをくっつければロンドンへ行 けるかもしれない、とも思ったが、新空港はまた行く機会ができるだろうし、CPA の長距離便は1回乗ってるので、それなら乗りたいけど搭乗経験のないSIAにし ようと思った。旅慣れていない女性1人で行くことから、親の許可をもらうには ツアーでなければならない。で、SIAを使うツアーを探すと行き先はシンガポール かアメリカしかない。アメリカのツアーを探してみると利用航空会社は複数ある うちの1つにSIAが入っている、という形で、これでは絶対SIAになる、という保 証はない。運が良ければSIAだが、そうでなければ他の航空会社になってしまい、 これでは旅行の目的に合わない。それに第一、治安が気になる。治安は旅行する 上での絶対条件である。

ということで、シンガポールに決定である。シンガポールならこれもまた評判が めちゃくちゃいいチャンギも体験できる。で、3泊4日ならうまくすれば年休を 取らないで済むかもしれない。出発の日は折角だからNRTも楽しみたいのと、時 間にせかせかするのも嫌なので夜出発、帰国は翌日のことがあるのと、費用の面 からして朝現地を発つツアーを希望していた。

で、シンガポールに行くツアーを探したところちょうど自分の要求にぴったりく るツアーが見つかった。しかもANAホテル泊である。日系ホテルなので旅慣れて ない自分にとって、しかも添乗員がいないツアーを利用するケースでは心強い。 ANAホテルは高級というイメージがあったにしては、同じ会社のツアーで他のホ テルを利用するものに比べて比較的安い。航空会社のホテルはどんな感じか見 てみたいと思ったこともあり、都合のいいことづくめである。とのことで、旅行 会社にこのツアーの申込を行ったところ、11日出発はホテルはOKだが飛行機は ダメ、10日についても飛行機が満席(そんなにシンガポールに行く人、いるの?) とのことで、ようやく12日に予約をとることができた。これで一安心である。

2.出発

NRTのSIAカウンタへの集合時間は16:00である。13:00にNRTへ着いた私は第2 ターミナルの展望デッキへ行ったり、ターミナルビルの中を探検したりして NRTを楽しんだ。なお、到着が深夜になるので治安の問題からとりあえず手持ち の10000円を両替しておくことにした。100数SGDになった。その時はまじまじと 見たことはなかったが、到着したホテルでこの100ドル札を見るとびっくりする ものを見つけてしまった。何と、チャンギ空港とその上を飛んでいるSIAのジャ ンボが描かれている(^o^)!これは飛行機マニアにとっては注目かと思った。 100ドル札を使わないで取っておきたいとも思ったが、日本円にしたら約7000円 である。チャンギとSIAジャンボのイラストに7000円かけるのもどうかと思った こと、今回はそんなに手持ちのお金を持たなかったこと、保存するにはよれよれ できたないお札だったことから、今回は惜しいと思いつつ、その100ドル札は使 ってしまった。ちなみに他のお札はシンガポールの景色があれこれと描かれて いた。お札の絵柄は人が多いが、シンガポールのように自国の景色というのは 新鮮に思えた。

第2ターミナルの展望デッキは行って見たものの、人はそんなにいない。もう少 し人がいても良さそうだ。第1は工事中で、飛行機は見えない。よくNRTに飛行機 を見に行く人の話は聞くが、どこに行くのだろう?NRT近くの航空博物館の展望デ ッキ、もしくは空港外の滑走路周辺だろうか?

第1ターミナルのデッキからビルに降りる階段のところではまたおもしろいもの を見つけてしまった。それは各航空会社が宣伝のために出している就航地の写真 であるが、CPAが出している写真の中に香港だけでなくロンドンが出ているので ある。しかも、だいぶ前に掲示されたものらしく、ロゴも昔のものだ。香港は CPAのベースなのでわかるが、ロンドンは何だろう?当時、香港がイギリスの植 民地であったこと、それより何もCPAがイギリス資本であることが影響している だろう。

時間がきたので集合場所に向かう。今回の参加者は私も含めて3名。2人は男性 のペアである。搭乗券と帰りの航空券を受け取り、出国審査場へ向かう。自分に 割り当てられた席は45Hである。この席はまたしても通路側。前回のCPAにしても、 1人の場合はツアーでもいい席が割り当てられる場合が多い(^o^)。 階段を降りていったところ、出国審査場は大行列である。そんなに長い休みでも ないのに、なんでそんなに混んでるんだろう???これは出張の時もそうだった。
最近、ちょっとした休みに近場の海外へ行く人が増えてるようだが、そんなにい るのだろうか?これじゃあ、出発時間が気になってゆっくり出国審査、という訳 にはいくまい。それに、出国審査場からSQ11のゲートである34まで意外とある。
出国審査の後、母に頼まれていた免税品を買い、ゲートに向かった。

3.機内

搭乗時刻が近づいた。まずファースト、ビジネス(ラッフルスクラス)、PPSという ロイヤリティクラブの会員、それからロスからの乗客が優先される。その後、自 分達一般のエコノミーである。

全員の搭乗が終り、ドアがarmedに設定された。そして非常設備の説明。ここの ところ、いくつかの航空会社の非常設備の説明を聞いていて、安全のしおりを見 て感じたのであるが、たとえ同じ機種であったとしても、航空会社によってこれ らの設備の扱いはだいぶ異なるという点である。シートベルトの締め方、酸素マ スクの扱いについてはあまり変わりはないが、またこれらの設備の持つ機能や役 割については変わりはないが、特にライフジャケットの扱いについては会社によ って着用するのに金具をはめるもの、ベルトをしめる、あるいはひもをしばるも のなど違いがある(引き手をひくと膨らむといった機能は違いないが)。

ある航空安全について記したWEBサイトに「飛行機に乗り慣れているからといって こうした安全の説明を無視してはいけない。飛行機の非常口なんかもそれぞれの 飛行機によって違うし、事故で悲惨な結果になるのはこういって説明を軽視する人達 なのだ」と書かれていたが、まさにそんな感じがする。

離陸後、ドリンクサービス、食事のサービスと続く。いつになったらフライトロ グを頼もうか悩んでいたが、時間がなくて迷惑をかけてしまうといけないので、 ドリンクサービスがある程度一段落した頃にお願いすることにした。ギャレイ のそばにスチュワードがいたので、事情を記したメモを見せたところ、
「素晴らしいお願いだね。ミールサービスが終ってからになるけど、それまで待 っててね。」
と快く引き受けて下さった。
SIAの食事は和食と洋食の選択である。和食は牛肉のしぐれ煮、洋食は魚料理で あった。メニューには洋食はSIA特別の料理とある。しぐれ煮を食べる気もしな かったので、洋食を注文。この時にワインは赤にするか白にするかと聞いて来 る。私は今まで機内でアルコールを飲んだことはなかったし、NRTでだいぶ歩き まわったのでだるくなってしまうと思ったのでやめようと思った。が、折角勧 めてくれるのでとりあえず赤を選択。

隣の乗客に声をかけられる。隣は定年とまではいかないが、ある程度年配の夫婦 である。「もしかしたら、あなたは中国人ですか?」
自分は日本人であることを告げると、「これは失礼しました」と言ったことから ちょっとお話をした。

A :「どうして中国人と思ったのですか?」
隣:「まわりに中国人がいっぱいいたからです。もしかしたら、お一人で旅行で すか?」
A :「いや、ツアー参加です。」
隣:「じゃあ、この近辺に他のツアー参加者がいらっしゃるのですか?」
A :「ええ。もしかしたらあなた方は夫婦でご旅行?」
隣:「そうです。」

この夫婦には他に若い娘と息子のような連れがいるようで、シンガポールの入国 カードが配られた時、「これ、どう書くの?」などとやっている。「あっ、便名 書いてない」「便名って何だっけ?」「SQ011だよ」などとやっている。このだん なさん、入国カードを手にして「以前とフォーマットが変わっちゃったなあ」な どとこぼしている。前にもシンガポールに行ったことがあるのだろう。

休憩に入ってしばらくしていると、日本人CAであるF氏が私のところまで挨拶 にやってきた。話によるとF/Oの奥さんが日本人スチュワーデスであることもあ って、日本語を少し覚えたこと、そしてログに自ら覚えた日本語で「ご多幸をお 祈りしてます」とメッセージを下さったとのこと。これだけでもう感激である。
そしてしばらく、F氏と話をした。

A:「今回の旅行でSQに乗るのを楽しみにしていたんですよ。」
F:「いかがでしたか?SQは」
A:「いいですねぇ(本当は例えば子供のいる席は隣は空席にしておいてくれると か、日本語版機内誌にシンガポールの入国カードの記載の説明があったのが良か ったといった細かな"配慮"もいい、と言いたかったが、そこまで頭が回らなかった)」
F:「そうですか。ありがとうございます」

で、更に私は飛行機が好きなんですねという話になり、コックピット見学のお誘い がかかった。本当は見たくてしょうがなかったが、ロスからのフライトでコックピ ットクルーが疲れているのではないか、と思ったこと、フライト時間が7時間しか ないので、コックピット、キャビンクルーに迷惑がかかるのではないか、というこ と、それに質問もちゃんとまとめていなかったので、今回は自分から申し出るのを 遠慮していたのだ。嬉しさのあまり、興奮してしまいそうだが、まわりは眠ってい る。大声を出して興奮する訳にはいかない。

F氏に連れられて2階へ昇る。その途中、「ここはラッフルスクラスのキャビン でその先はファーストになります」などと紹介してくれた。 荷物を持ってコックピットに入る訳にはいかない、とのことで2階のギャレーで荷 物を預ってくれた。身軽になりたいと思っていた自分は助かった。

そして、コックピットに入る。いつ見ても圧巻だが、夜間は計器のCRT 画面が浮かび上がるようで、なかなかのもの。この便は機長はH氏、F/OはG氏である。 早速、F氏は「クルー全員の分です」といって依頼していたログの他、記念にと 言ってセレスターのモデルとトランプをトレイにのせて差し出して下さった。 こんなに丁重に扱われたのは初めてである。が、汚してしまいそうなので後で袋に 入れて欲しいと依頼した。

質問はまとめていなかったが、いくつか聞いてみたいと思っていたことを質問し てみた。

・「西行きか、東行きかによって飛行高度に規則があるようだが、その規則は場所 によってその規則は異なるのか?」
F:(飛行高度の規則は)あると思います。そうでないと、飛行機、衝突してしまい ますし。 (これは私の説明が悪くてうまく聞き出せなかった。飛行高度の規則の存在は知って いたが、空域によってその細かな規則は異なるのか、という意味で質問したのだが)
・「セルカルって?これは地上が航空機を呼び出すために使われるみたいだけど、どの ようにして使うの?」

これについては、F氏もG副操縦士もセルカルという言葉が理解してもらえなか った(もしかしたら、セルカルって言わないのかな?)。で、レジと一緒に掲示してある AL-FJという記号について触れたらすぐに理解してもらえた。

G:これは地上が僕達の飛行機を呼び出すのに使うものだよ。

実際、管制は飛行中の航空機と通信する時、自分達のことを「シンガポール11便」 と呼ぶが、AL-FJはこの飛行機の「電話番号」みたいなものらしい。で、G副操縦士は 実際に「電話」がかかってきた時にでる音を実演して下さった。

更に、G副操縦士はレジの仕組みについても触れ、まず頭の2文字(とは限らないが) は国籍を表し、例えば9V-はシンガポール、9M-はマレーシア(これは私も知らなかった)、 Nはアメリカといった具合になること、もしお客様がシンガポールで飛行機を買っ たら管制がその飛行機を呼び出す場合は9V-レジになるが、SIAは所有する航空機も 多いので区別するために便名を付けていることなども説明してくださった。F氏が 言っていたように気さくな方である。

・「SQはB747-400をメガトップ、A340をセレスターなどと呼ぶが、誰が決めたの?」
G:これは公募できまったんだよ。シンガポール国内のみを対象にしたのか、 全世界を対象にしたか忘れたが。

こんな話をしているうちに時間はあっという間に過ぎ、F氏もキャビンヘ戻らな くてはならなくなった。私も長湯をして迷惑をかける訳にはいかない。で、最後に F氏のはからいでG副操縦士、H機長と記念写真を撮って下さり、席へ戻ることにし た。で、G副操縦士、H機長と握手をして(更にF氏もH機長と握手をして)コックピ ットを後にした。ログを依頼した時に入っていた袋はありませんか、と尋ねたとこ ろ、その袋が見当たらないのでSIAの免税品の袋でもいいですか?と確認があった。
どんな袋でもOKの旨を伝えると、後で持ってきますとのこと。

で、F氏からログの入った袋を受け取り、中身を見ようとトイレにかけこんだ。 (周りは寝ているし、照明を落しているので、電気をつける訳にはいかない) トイレから戻って席に座ろうとすると、お尻に何かが当たる。何だろうと思って 見ると、ログが入っていた袋の中にSIAのトランプが入っていた(^o^)。きっと、 F氏がこっそり気をきかせてくれたに違いない。

また、トイレの中のゴミを捨てるのを忘れたのを思いだし、慌ててトイレに戻った ところ、そこをたまたまF氏が通りかかった。で、問題のトイレに入ろうとした ところ、F氏はそうでないもう1つのトイレのドアを開けて「どうぞ」と言うの で、恥ずかしいながらも「いやあ、ここではないんですよ。実は、こっちのトイレ なんですが、トイレで出したゴミを捨てるのを忘れてまして、それを捨てにきたん ですよ」と説明をすると、「申し訳ありません」と言っていた。舞い上がっていて、 ゴミを捨てるのを忘れていた私も私だが、実に礼儀正しい。

その後、ドリンクのサービスがあった。が、ここでも更にびっくりすることがあっ た。今度はスチュワードが廻ってきたのであるが、他の乗客に対しては「Sir」と か「Mom」といったように一般的な呼びかけ語なのに対し、私だけは名前で呼ばれて いるのである(^o^)。これにはびっくりしたと同時に大感激した。

SIAでは乗客の名前を呼びながらサービスするという話は聞いたことがあるが、それ はラッフルスクラスとかファーストでの話で、自分達のようなエコノミー、しかも IT運賃で乗ってるような人間には縁がない話である。しかもSIAは初搭乗で、PPS といったロイヤリティクラブとも全く縁がない。ただ、飛行機が好きで、フライト ログをお願いしただけだ。しかもそのログを依頼する時に特に名前など言わなかっ たし、フライトログの依頼などよくありそうな話だ。それなのに、自分の名前を 覚えてくれて呼んでくれるのである。もうこれは、「心からの特別なサービス」以 外の何者でもない。ある飛行機の本の中でその著者がVIR(Virgin)のアッパークラス (ビジネス)のサービスについて触れており、乗客の要望に合わせて乗務員が振舞っ てくれるのがありがたいと書いている。それに加え、「乗務員が乗客をわざとらしく 名前で呼んだり、マニュアル通りのサービスを押しつけられるよりはるかに嬉しい」 と言っているが、今回はそうではない。だって、エコノミー、しかもIT運賃の客を 名前で呼ぶなど、どこのマニュアルにもないし、そういう通達もどこにもないもん。 非常にありがたいのだけど、周りに人がいる時にそれをやられるとちょっと対応に困っ てしまうが。

7時間という時間はあっという間で、チャンギ(以下、SIN)への到着も間近になった。 こんな素晴らしいフライトならもっともっと乗っていたいが、そういう訳にはいかな い。という間にSINに到着。飛行機を降りる際にクルーの方にいろいろお礼を言いた かったが、時間もなく、次がつかえているのでそうはいかない。一通り挨拶をして 搭乗機9V-SMFを後にした。

4.SIN

SQ11は真夜中の1時過ぎに着いたためか、ホールの人は非常に少ない。ゲートから 入国審査場まで長い、長いと思いつつ、初めての場所でしかも自分1人だけに不安を 抱えながら入国審査場を探した。で、行列に付いて行ったところ、無事見付かった。 とはいうものの、カウンタがいくつか並んでいて、そこには係員しかいないので、 これ、本当に審査場?とも思ったが、機内で配られた入国カードが積んであったので、 ここであることは確かだ。パスポートとカードを差し出すと、何も言わずスタンプを 押してパスポートを返してくれた。

で、荷物をターンテーブルから受け取って集合場所へ向かった。このターンテーブル もいくつかあったが、動いていたのはSQ11のものだけのような気がした。 SINはよくアジアの「空の十字路」と言われるが、夜遅いせいか、このフライトではそ れを実感することはなかった。もしかしたら、最終便だったからだろうか?


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(3)1999年 シンガポール(2/2)