最近、国内線でも「早割」「特割」「バーゲンフェア」(航空会社によって呼び方は異なる)といった割引運賃が定着しましたが、国際線運賃は国内線以上にさまざまな運賃体系が存在します。かつては安い航空券といったら格安航空券、というのが相場でしたが、航空会社もこのところ増加している個人旅行者をターゲットに、さまざまな商品を提供するようになっています。また、格安航空券1つとってみても、いろいろ種類があって、それぞれの間で何が違うのかいまいちよくわからない、という方もいらっしゃるかと思います。国際線航空券の種類はオンライン・オフライン問わずさまざまなリソースで紹介もありますが、私なりに簡単にまとめようと思います。
現在、個人で購入することのできる日本発の国際線運賃(エコノミークラス用)は、ざっと以下の種類があります。なお、これらの運賃については航空旅行記用語集にも説明がありますので、参考にしてください。
その他、一部の航空会社対象の環太平洋周遊運賃、アライアンスで発売する周回旅行運賃、夫婦や高齢者等を対象としたF、Cクラス割引運賃、香港向けの回数券等がありますが、これらについては割愛します。日本発で個人が購入することのできる航空券の詳細はIT運賃以外は条件、価格も含め、OFCタリフ「日本発特別運賃(ITを除く)」に記載されています。
更に、日本発だけでなく海外発券という形態もあります。これは名前の通り、日本以外の国を出発地とする航空券です。これと日本発の航空券を組み合わせて旅行する、または、場合によっては海外発券の航空券だけで旅行することも可能であり、個人旅行の航空券の選び方は星の数だけあります。
単に値段だけが安い航空券を求めるなら、AB-ROADなどに代表される旅行雑誌や旅行会社のチラシ、最近では数多ある旅行会社や検索サイトの格安航空券検索サイトを丹念にチェックすれば、それなりの価格を出す航空券に巡り合えることでしょう。しかし、安い航空券には制約があり、例えば1ヵ月の旅を計画している人が「最安値」な航空券を見つけたはいいが、それが10日間FIX航空券だったりしたら、旅の目的には合致しない訳です。そのために、1ヵ月旅行したかったのを航空券の有効期限に合わせて10日間に短縮したとしたら、欲求不満になるでしょう。
何がしたいか、航空券に対して何を期待するかによって、その人によって本当に「安い」と思える航空券は違うと思います。私は、自分の旅の目的が目的だけあって、航空券に対する比重は他人より高いのですが、旅の目的によって航空券を使い分けています。私自身、費用対効果という言葉を使いますが、その旅に対する満足度という点で費用対効果が最高になる運賃、それがその目的にあった航空券だと思いますし、それは必ずしも底値な航空券とは限らない、ということです。考え方によっては、ベラボウに高いIATA PEXや普通運賃がお値打ち、ということもあると思います。要は、その時の予算と費用対効果のバランスです。
航空券に関する情報はさまざまなリソースで提供され、情報には事欠かない時代になりましたが、それらの情報に踊らされず、まずは航空券を買う前に、自分の旅の目的を良く考え、航空券の特性を理解し、自分は航空券に何を求めるのかを考えましょう。価格を重視するのか、サービスを重視するのか、スケジュールや所要時間を重視するのか、FFPのマイルを期待するのか。航空券に求めるものはその旅それぞれ、また人それぞれです。これらのことを考えて納得できるものを探すのが自分に合った航空券に出会う一歩だと思います。これは、航空券に限らず、何か物やサービスを購入する際に誰もがやっていることですが。
フライト選択をする上で注意しなければならないのがこれらの用語でしょう。「直行便」という言葉は一見すると「目的地までダイレクトに飛ぶフライト」というように見えますし、そのことから目的地までどこにも止まらない、ノンストップ便という解釈をするのが一般的かと思われますが、実はそうでないケースがあるので注意が必要です。
直行便という用語は、「目的地までフライトナンバーが変更しない便」という意味で使われるケースがあります。これには勿論、ノンストップ便も含まれますが、この解釈からいくと、フライトナンバーを変えずに途中地点を経由する経由便も含まれます。航空券やツアーの購入で「直行便」という言い方をした場合、必ずしもノンストップ便だけではないのです。
例えば、ニューヨークから香港へのフライトにキャセイ航空のCX831とCX889というフライトがあります。CX831はニューヨークからどこも経由せず香港へ向かいます。同じ香港行きでもCX889はバンクーバーを経由しますが、フライトナンバーそのものは香港までCX889と変更がありません。CX831はノンストップ便ですが、CX889は経由便であって、ノンストップ便ではありません。ところが、CX831もCX889も直行便に含まれます。CX889の場合は香港まで同一機材を使用し、バンクーバーで飛行機を乗り換えることはありませんが、中には経由地で飛行機を乗り換えるケースもあるみたいです。
これに対し、途中地点でフライトナンバーが変わるものが乗り継ぎ便です。名前の通り、これは途中で飛行機を乗り換えます。航空券や搭乗券は、乗り継ぎ地点までとそこから先の分が発行されます。
日本発となるとそんなに複雑なことはないかと思います。かつて、格安航空券はその経緯から怪しいものと思われた時期がありましたが、今では大手旅行会社も販売する、何も怪しいものではないです。安心して購入しましょう。また、航空会社系列の旅行会社で格安航空券を販売するケースもあります。一般的に旅行会社が発行する航空券はBSP発券と呼ばれる、IATA加盟全航空会社共通フォーマットの航空券になることが多いですが、航空会社系の旅行会社ですと、その航空会社独自フォーマットの航空券になる可能性が高いのも、飛行機ファンにとってはささやかな魅力です(航空会社系列でない旅行会社でもBSP発券にならないケースもあるが、どこの旅行会社でどの場合に航空会社オリジナル仕様になるか、というのは事前にわからない)。
ネットで格安航空券も含め、ZONE PEXも申込&購入できる時代になりましたが、私は基本的にはネットは相場などの情報収集に使い、できるだけ対面販売で購入するようにしています。運賃や条件を調べる→旅行会社などに問い合わせる→予約を入れる→航空券購入、というフローで進めています。
IT運賃のうち、航空券の種類によってはフライト、航空会社が指定できないものもありますが、それができる航空券であれば、フライトを指定、もしくはどんなフライトかを確認して航空券は買いましょう。IT運賃の場合はできないケースが多いようですが、コードシェア(共同運航便という言い方もある)といって、A社の航空券を買ったのにB社運航だった、というケースが最近急増しています。これは、うまく使えば航空会社の乗り比べができるなどのメリットもありますが、自分が思っていたものとは別物だった、という失敗をしてしまうこともあります。前述したノンストップ便、経由便の話も同様です。自分の期待しているものと合致しているかを確認しましょう(割引運賃の中には、経由便前提の運賃もある)。また、フライトスケジュールは旅の危機管理を考える上でも重要なチェックポイントです。特に女性は慎重になるべきでしょう。
なお、IATA PEXや世界一周運賃等、複数の航空会社が利用できる航空券を航空会社で予約・購入する場合、注意すべきことがあります。原則、国際線航空券の予約・発券は最初の国際線を受け持つキャリア(これをヘッドキャリアと呼びます)が受け持つ、というルールがあります。例えば、
という旅程の予約・発券をする場合、CXやBA、SQの予約はJALが行い、発券もJALが行うことになります(CXやBA、SQのチケットもJALフォーマットになる)。CXが好きなので、CXに発券してもらいたい、といったことはできません。これは裏を返せば、他社便の予約、発券もヘッドキャリアに任せればいい、ということを意味します。但し、これは旅程内の全てのフライトを出発地からのチケット全てに入れる場合に適用される話で、海外発券と日本発券を組み合わせるなど、複数のチケットを使って旅行される場合には適用されません。個々のチケット毎にヘッドキャリアが存在し、出発点から戻って来るまでの旅程に対しこのルールが適用されることになります。
海外発券の魅力はいろいろあります。海外発券を愛用する海外旅行ファンがそれを支持する理由として、日本発の割引航空券が圧倒的にFIX主流だが、海外発券はOPEN主流であること、有効期間が長いことなどを挙げますが、飛行機ファン的にも興味深いものだと思います。私が考える海外発券の魅力を以下に挙げます。
海外発となると、対面販売は難しいところがあります。海外の旅行会社から直接購入するケース、ネット販売などによる航空会社からの購入、日本の旅行会社から購入するケースがあります。
海外の旅行会社から購入するケースは、私はまだやったことはないです(問い合わせだけはしたことがある)が、日本語が通じる海外の旅行会社もいくつか存在します。旅行会社によっては日本語のWEBサイトを持っていて、そこに料金表が出ている場合もありますが、日本人に人気のある路線や航空会社だけを挙げていて、それが全てではないです。WEBサイトに掲載されていない路線についても、自分の希望する条件を挙げて問い合わせれば、見積りを出してくれます。
日本発のZONE PEXがそうであるように、海外発の航空券についてもネットで購入することができるようになっています。各航空会社でも自社のWEBサイトでキャンペーン運賃を販売していて、これを見ると「おおっ」と思ってしまうものもあります。ネットですから、原理上は日本に限らず、世界のどこからでも購入できそうですが、果して、日本でこの航空券を買ったとき、どこまでアフターケアが得られるのかわからないので、私自身は買ったことがありません。航空券は買ったままでおしまいではなく、買った後は疑問点の問い合わせや現地連絡先の連絡も必要ですし、予約を入れる際も、自分の連絡先を入力する必要があります。その際、日本の連絡先を入れても良いのか、わからないことだらけです。これらの疑問が解決したら、魅力的な航空券があれば買ってみたいとは思いますが。
海外発券の航空券を扱う日本の旅行会社もあります。数こそは多くないですが、日本語で顔を合わせて話ができて、日本円で決裁ができる、というのも旅慣れていない人達にとっては大きな魅力です。また、発券地をその時々によって自由に選ぶことができるのも魅力の1つです。
海外発券を行う日本の旅行会社の例を紹介します。
海外発券の場合、当然日本から発券地までの航空券は別途必要になります。例えば、バンコク発券で東京行きの航空券を購入した場合、往路のバンコク-東京を破棄して復路のバンコク-東京だけを使用したり、往路の放棄はしないまでも、使用する順番を入れ換えて東京-バンコクから使い始める、といった使い方はNGです。航空券の使い方には順番があって、発券された出発地から順番に使わなければならない、というルールがあります。よく、旅慣れた人が海外発券だけの航空券で旅行している話を見聞きしますが、それは一旦片道航空券などで発券地に入り、そこで帰国用の航空券を購入し、その航空券で帰国した結果、復路となる発券地までの航空券がある(一旦帰国用の現地は津航空券を入手した後は、帰国用航空券購入を繰り返すことで、結果的に日本発航空券が不要になっている)だけのことであって、往路を破棄したり、使用する順番を入れ換えるのは御法度です。
フライトの予約を入れ、運賃を支払うといよいよ、航空券を手にします。IT運賃ではクーポンが渡され、現物は当日空港でクーポンと引き替え、ということもあります。
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、国内線の航空券はATBと云われる、航空券と搭乗券が1枚の紙に印刷された厚紙です。そして、各航空会社オリジナルのデザインです。国際線航空券も大部分の場合、ATBであるのは変わりないのですが、国内線航空券とだいぶ様相が異なります。航空会社で発券した場合は勿論、その会社オリジナルフォーマットになりますが、国内線航空券と形状は全く異なります。また、旅行会社で発券した場合はBSP発券と呼ばれる、全航空会社共通のフォーマット(現在では表紙に地球儀と飛行機が描かれ、券片は黄緑色の厚紙)になることもあります。
国際線航空券の場合、航空会社で発行しようと、旅行会社で発行しようと記載事項は共通です(IATAの規約で記入項目や形式が決まっている)。
航空券を受け取ったら、
を確認しましょう。日本語で記載のある国内線航空券とは異なり、国際線航空券を読むにはコツが要ります。初めて国際線航空券を目にした方は、アルファベットの暗号だらけ、という人もいます。航空券にはフライト情報の他、その運賃がどんな条件か、といったことも示されていますが、ここでは航空券を受け取ったときに最低限確認しておきたい項目の読み方を簡単に説明します(航空券は良く読むといろいろなことが書いてありますが、それについてはまたの機会にします)。
国際線航空券は搭乗区間の券片だけでなく、最終ページに旅客用控えが添付されます。これは、旅行が完了すると手元に残るものです。これはゴミではなく、旅行中は必要なものですので、旅行が完了するまでは捨てずにそのままにしておきましょう。また、FFPのマイル加算手続きなどで帰国後も必要になることがあります。
今まではこうして紙製チケットが発行されてきましたが、ここ数年の間に状況は大きく変わってきています。Eチケットと呼ばれる発券形態がここ数年の間に国際線の世界でも大きく幅を効かせてきていて、スタンダードになりつつあります。既にアメリカではEチケットが常識、アメリカ系航空会社等を中心に、紙製チケットを発券すると手数料を取る会社も出て来ています。
Eチケットとは、電子チケット。一言で言ってしまえば、チケットレス発券です。今まで紙に打ち出していた航空券情報を航空会社のコンピュータに格納し、そのデータを元に処理してしまう形態です。Eチケットは航空会社、利用者共に下記のようなメリットがあることから、IT技術が発達した今、急速に浸透しています。
Eチケットの場合、航空券の代わりに旅客が手にするのはEチケット控えです。Eチケット控えは形状的には前述した航空券控えそっくりなもの、旅程表のような物などいろいろあります。乗客はチェックインの際、航空券の代わりにこれを差し出してチェックインしますが、Eチケット控えがなくても、予約情報兼航空券は航空会社のコンピュータ内に入っていますから、チェックインが可能です。それゆえ、航空券管理の煩わしさから解放されるのです。
Eチケット控えは航空会社や旅行会社が乗客へ提供する以外にも、指定されたWEBサイトにログインしたり、Eメールで送られた電子ファイルを自分で印刷することで入手する場合があります。
Eチケット控えに書かれている項目も、ブツのフォーマットこそ異なりますが、基本的には従来の紙製チケットに書かれている内容と同じです。表記法も紙チケットと一緒です。紙チケットにある運賃計算等も基本的には全て書いてあるようです。但し、Eチケット控えが旅程表のようなもので、自分で印刷する場合、ちょっと見ただけでは旅程表と取り違える可能性もあります。その時は、運賃計算欄や税金情報等のあるのがEチケット控えになります。
よく、CIQ等で「帰国用の航空券を見せてください」というのがありますが、そのときはこのEチケット控えが代用品になります。但し、国によってはEチケット控えを認めなかったり、空港によってはEチケットが扱えないところもあるので注意が必要です(主要な大空港ではまずEチケットは扱え、EチケットがNGな場合は、紙チケットを発行するような気がしますが)。
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To be continued...