(2)1998年 イタリア(6/8)

Date
1998.5.3
Flight No.
CX292
Aircraft Type(Registration No.)
A340-313(B-HXG)
Route
FCO-HKG

4日間たらずのイタリア滞在はあっという間に過ぎ、帰国の日になった。 FCOに到着した私達は、まず帰国便のチェックインとなる。CPAのチェックイン カウンタの上にはCRTディスプレイにユーラシア大陸が映し出され、そこに「Cathay Pacific CX292(HONG KONG)」と表示があるので、そこでチェックインすることに なる。添乗員はツアーメンバー全員のパスポートと航空券をCPAのカウンタに差し 出し、手続きを行う。通常この時点で荷物を預け入れるのだが、VATの返還手続き があるのでそうすぐには預けられない。自分は手続きすれば何千円か返ってくるこ とになっていたが、手続きに時間がかかって搭乗時刻に間に合わないことがある、 ということ、手続きを待っている時間で未知の空港散策を少しでもしたかった、そ のために「時間を買った」と考えればいいや、数千円で楽しめればいい投資だ、と いうことで手続きを行わず、添乗員と一緒に即荷物を預けることにした。測ってい る秤をみると、重量は約13kg(!)。今回はそう重いものは買ってないのに、意外とある ものだ。

他のメンバがVATの手続きをしている間に散歩したいと添乗員に申し出たが、これは 却下。「なぬー」とも思ったが、これは仕方がない。これじゃ、VATの手続きをすれ ばよかった。でも、空港のタイムテーブルはあちらこちらに置かれていたので、しっ かりと貰ってきた(^^)。

FCOを発着する国際線はどうもシェンゲン協定国行きとそうでない便とで扱いが違う ようで、シェンゲン協定国行きの便は国内線のエリアを通って出国手続きを行うが、 そうでない便は国内線エリアを通らず、直接国際線エリアへ入る。ところがなぜか CPAはシェンゲン協定国行きと同じ扱いを受けるようで、しっかり国内線エリアを 通っている。香港はとっくに中国に返還されているのに、である。この事実は非常 に興味深い。CPAがイギリス資本であることもあるかもしれない。つまり、これは 国内線エリアも散策できる、ということである。CPA利用のメリットだ。

とりあえず、時間までに搭乗口に集合ということで、あとは自由行動になる。で、ま ずはAZAのサービスカウンタがあったので記念にAZAの時刻表を手にいれようと思った。 スマートな感じのAZAの女性職員がそばを通った。添乗員はAZAの制服はかっこいい、 と評していたが、そうさわぐほどでもない。ただ、センスは感じられるが。
で、タイムテーブルのありかを聞くと、1階のカウンタに聞いて欲しい、という。 実際に行こうと思い、途中まで行ったが、搭乗ゲートに行けなくなると困るので引 き返した。タイムテーブル1つのために飛行機に乗れないのは困る。
その後は国内線の売店を覗きながら時を過ごした。

ところどころに設置されているフライト情報のCRTを見て気づいたことがあった。そ れは航空会社名が記載されていないことである。狭い画面にそこまで表示するとごち ゃごちゃするし、搭乗券にそれが書いてあることは多いから困ることはないと思うが、 IATAコードである(例えばキャセイの「CX」など)。自分の搭乗する便については搭乗 券さえしっかりチェックすれば困らないだろうが、他のゲートの出発便に興味を持っ たらIATAコードは避けて通れない。日本と違って、国内線もIATAコードのようだ。日 本の国内線はともかく、海外ではIATAコードは常識なのかもしれない。その国の言葉 がわからなくても、IATAコードさえわかればどこの航空会社かわかるからである。
ちなみに、啓徳はこれに加え、中国語で航空会社名が書かれていた。

搭乗時間が近ずいたので出国手続きを行い、国際線エリアへ移動。他のメンバは既に 国際線エリアに入っていたようだ。免税店の雰囲気も国内線エリアとだいぶ違って 華やいで見える。ベネトンも店を出していた。いろいろあったみたいなので、もっと 早めに入って覗けば良かった。日本では見掛けない赤い飛行機がとまっていたので、 それを窓越しに撮影した。この飛行機、ヴァージンエキスプレスという航空会社のも ので、尾翼に「Virgin」のマークが入っている。もしかしたらイギリスのヴァージン (VIR)の子会社では、とも思ったが、調べて見るとこの会社、ベルギーの会社のよう である。VIRがベルギーに子会社を持っているのかもしれないが、実際はどうなのだ ろう。

機内

搭乗時刻になった。放送と同時に私達の集団は機内へ入る。この日のシップはB-HXG。 CPAがこの年(98年)の2月に受け取ったばかりの機体だ。機種はA340-300。初めての 搭乗である。今までいろいろな飛行機に乗ってきたが、こんなに新しい飛行機に乗 ったのは初めてだろうと思う(レジチェックは今回の旅行から始めたが、こんなに内 装がきれいな飛行機は見たことがなかった。今までの中で最も新しい飛行機だとい えよう)。内装がピカピカなのである。思わずこれには感動してしまった。このよう な機材が長距離便で利用できることは、快適な空の旅が期待できそうだ。もちろん、 CPAご自慢のパーソナルTVもしっかりついている。

今回は「いつも通路側なので」ということで添乗員が気をきかせてくださったらし く、窓側の席を割り当ててくれたようだ。で、席へ行くと、なんとちゃっかり先客 がいた。ちょっと黒っぽいようだが、顔形はアジアの系統の女性である。彼女は CPAのタグをついた手荷物を置き、ちゃっかり座っている。「そこは私の席だ!」 そう言おうとも思ったが、やはり通路側の方が動きやすくて都合が良いので、その まま放っておいて、その隣の席に座ることにした。まあ、着陸の時に外が楽しめな いかもしれないが、その時は彼女が外を見ている時にちょっと覗かせてもらおう。 こっちもちゃっかりしている。

それを見た添乗員、「席を替わってもらうようにいいましょうか?」と言うが、私は 例のごとく動きやすい方が都合が良いので、「いいです。通路側の方が都合良いです から」と答えると、「申し訳ないですね。9V-SJFさんはずっと通路側だったし、みんな どこかのフライトで窓側になるようにするつもりだったのですが」。

お土産のワインの入った紙袋がとうとう切れてきた。割れものなのでプラダでもらっ た紙袋(って言っても無地の袋)にワインを入れて持ち歩いていたが、FCOで時間を潰し ている間に破れてきた。これでも、バンソウコウで応急処置はしたものの、重みでど んどん破れてくる。そんな時、都合良くツアーメンバーがCAからガムテープを借りて いたので、彼の後で貸してもらう。助かった。それにしても、CPAのクルーも随分とも の持ちがいい。やっぱりKIXで麻袋を調達すれば良かった(;;;)。

機内放送が入った。なんと、日本語がある!これ、日本とは全く関係ない便である。 それだけ日本人の搭乗率が高いということだろう。しかも、日本人CAが3人もいる。 CPAはアジアの各国からCAを集めていて、しかもその国の発着便とは関係ない便にも 乗務しているという話は聞いているが、「乗務員の出身国との往復(悪く言えばおま けみたい)に終らせるのではなく、出身国に関係なく、CPAの一員として世界中で働 いてもらう」というCPAの姿勢はすばらしいと思う(その代り、入るまでの競争は激 しいかもしれない。日本人は多く採用しているようだが)。JALやANAといった日系の 航空会社なら世界中で働けるが、普通、外資系の航空会社の日本人CAというと、 「日本便での"補助"」的な意味合いがあるからである。
また、安全設備の説明以上に、如何にCPAが日本を意識しているか、ということでも ある。日本人にとってはこれは心強い。

離陸後ドリンクサービスがあったが、いつものごとくピーナッツがでた。このピーナ ッツも香港製(^^)。で、その後昼食となった。3種類のメニューから選択だが、イタ リアらしくパスタ料理があった。自分もパスタを食べることにした。これもなかなか おいしい。ここのところ、機内食でまずくて食べられないものに当たったことはない。 運、というのもあるが、エコノミーの機内食のレベルは上がってるようだ。CX251で出 たタルトはなかった(;;)。替わりにイタリアのチョコケーキがでた(^o^)。イタリアは バッチチョコが有名なように(私も買った(^^))、きっとチョコがおいしいのだろう。 ちなみにバスのトイレ休憩で立ち寄った土産屋にチョコは「大量に」売られていたし、 ローマ滞在中のホテルのそばのスーパーにもバッチチョコが大量に売られていた。 しかも啓徳の免税店、NRTの「世界のお土産」コーナーにもばっちりバッチチョコが 用意されているし、成田の航空博物館の売店にまで進出している。
(タルトって何も考えなかったけど、あれは香港(マカオもそうらしいが)のお菓子のつ もりで出したのね。このレポートを書いている時、初めて知りました。)

機内食のサービスが終ったら様子をうかがってフライトログを依頼することにしよう。 で、後方のデッキに行って声をかけられそうなCAに話をしてメモを渡す。が、日本人 CAのD氏がすぐさま出てきて「何でしょうか?」と聞かれる。日本人なら説明がし やすい。ログの方は彼女に依頼することにした。と同時にコックピット見学も依頼。 また誰かと一緒に見学となった時、また私の英語力のなさで聞きたいことが聞けない のは悔いが残る。で、どうしても聞きたいことについて帰国の前日0時近くまでかけ て考え、搭乗までにもあぶり出してまとめた質問状を彼女に手渡した。

しばらくしてD氏がやってきて「コックピット見学の許可が降りたので案内する」 という。彼女に連れられてコックピットへ行くが、「ここはビジネス」「ここはファ ースト」とキャビンを案内してくれる。ファーストのキャビンなど通るのは初めてだ。 ビジネスもファーストもエコノミーと違って静かで落ち着いた空間。D氏はコック ピットそばのファーストのギャレイを指して、「ここがファーストのギャレイです」 と案内してくれた。丁度ファーストの乗客の食事が終ったようで、CA達が汚れた陶器 の皿を片付けていた。ファーストのサービス風景は写真では見たことがあるが、「豪 華な」ファーストの世界をかいま見たような気がした。ビジネスにしろ、ファースト にしろ、あまりにも高級すぎてGパン姿の私のような人間がうろうろしていいのか、 という雰囲気だ。こんな格好で通るのが申し訳なくなってしまう。

最近、ファーストやビジネスに子供の泣き声が響く、ガキがファーストだビジネスだ というのは贅沢だ、という批判が聞こえてくるが、このような空間に入ってしまうと それは納得できる。ここはエコノミーのガシャガシャした雰囲気とは隔離された「大 人の空間」なのだ。乗客は「この空間」に対して価値を見出し、割増し運賃を払って いるのである。子供の泣き声はこのような空間と真向から対決するものなのだ。 だからこのような席に座る時はそれなりにおしゃれして、品良く振舞わなければなら ないだろう。

コックピットに入る。今回はどうやら私1人だ(^O^)。ジャンプシートに座り、シート ベルトをはめるがどうも、客室のベルトとは違う(;;;)。やり方がわからない。その 時、チーフパーサと思われる女性が丁度いて、彼女がベルトをはめてくれた。
よくファーストやビジネスが前の方にあるのは揺れないから、という理由ということ を聞くが、今回はタービュランスが結構あったみたいか、よく揺れた。まるで馬か何 かに乗って揺られている感じ。眼下は雲が敷き詰められているように広がっている。 まだ外は明るい。

で、早速質問状のQ & Aが始まった。回答は機長が行った。

ポジションレポートを行う地点と地点との距離は、地上の状況、(例えば砂漠、etc. という意味で聞きたかったが、どうやらニュアンスがうまく伝わらなかった)に依存す るのか?
→位置については国によって決めている(?)
通常はポジションレポートが必要であるが、レーダー管制を行ってる場合は、ポジシ ョンレポートは必要ない。なお、このポジションレポートはパイロット自身で行う。
HKGからROMまで、HKGからLONまでの航空路は各々異なる?
→ROM/LONとも複数のルートあり。どのルートを使うかについては、 風速や航空路の混雑状況をみてその都度決める。
登録記号の頭文字、"B-H"は中国では香港用に割り当てられている?
香港が中国に戻ってからは、VR-HがB-Hになったみたいだが。

→YES。VR-Hは香港がイギリス領だった時の国記号。国記号というのは、各国毎に割り 当てられていて、例えばBは中国、Nはアメリカ、Gはイギリスといった具合に。(この 後、日本はどうだっけ?と出たので、日本はJAです、と回答した)

(ACARSやINSなどのある計器板をみると、B-HXGと書かれていた。登録記号の隣に別の 記号が書かれていたが、この記号は飛行機の呼出につかう別の記号らしい。)

CLKが7月に開港するに伴い、啓徳は潰れるが、その後、啓徳の跡地はどうなるのか?
→ショッピングセンターやジム、アパートなどができる。
飛行高度について何か決まりはあるのか?
→YES。西行きか東行きかによって高度の規則が異なる。
ちなみに、292便の飛行高度は現在33000ftだが、37000ftまで上昇予定と説明があった。 (でも、最終的には33600ftまでしか上昇しなかったよう)

あと、コパイが自動操縦装置(?)を見せ、この中のコンピュータに飛行ルートが記憶さ れてること、EHSIを見せ、自分の飛行機と、ここに前を飛んでる飛行機がいることを教 えてくれた。前を飛んでる飛行機の便名などはわかるのか、と尋ねたところ、ここまで は分からないようである。

D氏が戻ってくる。「よくわかりましたか?」何を考えたか私はとんちんかんなこと を言ってしまった。本当はいろいろと勉強になったのですが、変なこと言ってごめんな さい。> Dさん

席に戻ると軽食が回ってきた。メニューをみれば分かったのだが、いきなりだったので びっくりした。サンドイッチだった。が、いろいろな具を挟んだサンドイッチが嫌いな 私にとってはどうもいただけない。もったいないので頑張って食べたが。
私はサンドイッチにいろいろな具を挟むのが嫌いで、例えばハムサンドならハムしか 挟まないと嫌なのである。バターやからしをパンに塗るのは今は少しは平気になった が、それさえもできれば塗ってほしくないと思う。アメリカ出張の時、出張先の会社 でサンドイッチをごちそうしてくれたが、それこそごちゃごちゃ挟んでいるので、最 初は何とか喉に押し込んだが、もう体が受け付けなくなったことがある。

それにしても子供の泣き声がうるさい。それに、休憩時間に入ってもCAの呼び出し コールが続いた。このフライトで彼女達はなかなか休めなかっただろう。なんか 同情したくなってしまう。添乗員は「イタリアへのフィリピン人出稼ぎ労働者が 里帰りするらしく、この便は多いらしいですよ」と言っていたが、事実、機内を 見渡すと東洋系の人間が多かったし、私の隣席の女性もフィリピン人のようだ。

フライトログが返ってきた。今度は別のクルーだったが、その時に投票用紙を持って きて、これに記入お願いします、と私に渡した。この投票用紙とは、CPAがやっている 社内キャンペーンで「すばらしいサービスをしたCA」を乗客の投票で選び、月毎に集 計して表彰する、というものである。その投票用紙であるが、座席のポケットにも入 っていて、投票したい人は誰でもできるようになっている。わがままも聞いてくれた し、ログを見るとよくいろいろとメッセージを寄せてくれたし、子供の泣き声や休憩 中のコールでも一生懸命答えているので、投票しようと思った。

この投票用紙、個人名を指定するようになっているが、私としては個人でなくみんな がいい仕事をしていたので、感謝の意味を込めて「CX292のクルー全員」と書いて(本 当は封をするが)封をしないでだそうと思った。それで、CPA全体の良い印象について 触れようとコメントを書いていた。ところが、「これからCX506もあるし、この前の 便でもすばらしかったクルーはいっぱいいる。彼女らにも投票したい。」などと思うと いざ書いてもなかなか提出できず、そのままになってしまった。このことが悔いに残 る(それなら、CX506で全部の便のクルーに投票すれば良かったのにね。これって月刊 集計だけど、感謝の気持を形にするのだけと考えれば、そんなことにこだわる必要は ないじゃない)

搭乗人員はFが4(12)、Jが40(40)、Yが197(197)(括弧は全席数)となっている。 ということは、ファースト以外は満席、ということである!これでは彼女達が気を 使うのも無理はない。

機内誌にあったルートと同じようでフライトパスを見ていると、ギリシャ、トルコ、 イラン上空を飛行しているようである。このあたりは記憶が定かではないが、チベッ ト上空も飛んでいるようだ。CPAのフライトパス、なかなかの優れもので高度、速度、 外気温、目的地までの所要時間などといった情報のみならず、通過都市までの距離と その位置関係までも表示してくれる。よくできているものだ。飛行中はだいぶ楽しま せてもらった。

ろくに眠れずに時は過ぎ、あっという間に朝食の時間になった。内容は例のオムレツ の他、コンチネンタルが出たようだが、確かまたオムレツを食べたような気がする。 香港が近付き、まわりもあわただしい雰囲気になってくる。あんなに長い時間乗って いても、何かちょっと寂しくも感じる。不思議だ。着陸体制に入り、窓を開けてみる 人がだいぶ増えた。フライトパスを見ると、もうCLK(香港の新空港)上空だ。 外は羊雲が一面に広がっている。テレビの方も啓徳の案内を流しだした。みな、香港 カーブが体験できるかと思い、窓に釘付けになっている。が、どうやら今回は海から の進入だったらしく、香港カーブではなかったらしい。私にとって、最後の啓徳到着 だけにあって残念だったが、これだけは「運」である。仕方がない。
で、啓徳に着陸。私にとって「最後の」啓徳行きはこれで終った。

朝の6時過ぎだというのに、蒸し暑い空気が出迎える。降機後は乗り合いバスでター ミナルに向かうことになるが、記念に搭乗機の写真を撮ろうと思ったら地上職員が 出てきて「禁止」。なぜだろう。飛行機の写真をタラップから下りて撮ることがそん なにまずいことなのかなぁ。これも随分シビアなことだと思ったが、規則のようだ から仕方がない。

ターミナルにつくと、CPAの職員が「CX292→xxx(xxxは各乗り継ぎ便の便名)」と書か れたプラカードを持って乗り継ぎ客の案内を行っている。再び私達は例の階段を昇っ てCX506を待つことになる。


航空旅行記目次
(2)1998年 イタリア(5/8)
(2)1998年 イタリア(7/8)