(2)1998年 イタリア(7/8)

Date
1998.5.4
Flight No.
CX506
Aircraft Type(Registration No.)
B747-467(B-HUJ)
Route
FCO-HKG

次のCX506は11時出発予定である。ここが啓徳で過ごす最後の一時である。 またも免税店の「酒&タバコを買うとプレゼント」券をもらったが、私には用は ない。しかもこの券、「CX506」としっかり便名まで書いてある!どこからその ような情報が流れるのだろう?添乗員が気をきかせて免税店と交渉したのだろう か?

展望デッキがあれば行ってみたかったが、どこにあるかわからなかった。しばら くボーッとしていると、なんと「Sprit of Hong Kong」号(以下、「家」号と記す。 当機に大きく「家」と書かれている)がゲートにとまっている!何があるかわから ないものだ。この機体、ターミナルへ移動するバスの中で見たが、まだとまってい た。CX506がこれならもう最高なのだが、世の中そううまくはいかない。どうやら 別の便として使われるようである。ゲートを見ると「CX460」とあった。台北行き である。しかもCX460はボーディングゲートからの搭乗で、機体は目と鼻の先、手 に取るようである。

私が見ていた時は丁度、機内食や備品を機内に運びいれている様子で、ゲートにも 人がいる様子がなかった。しかも朝なのできっと写るだろう。人がいると恥ずかし いし、何かいわれそうなので人がいないうちに必死になって撮った。写真映りは満 足するものではなかったが、貴重な写真を撮ることができた。これがこのHKG滞在の 最大の成果だろう。またこの飛行機を見ていて1つ面白い発見をした。この飛行機、 左右に書かれているタイトルが異なる点である。機体に向かって左は「THE SPRIT OF HONG KONG 97」とあるが右は中国語らしく、「繁栄進歩 (栄の字は旧字体。字が でませんでした)更創新高」とある。CPAの機体の塗装で漢字のものを見たのはこれ が初めてである。香港とはいっても、イギリス系の企業なので今まで漢字は使わな かったのだろう。CPAがこの塗装に込めた意味というのは、

「(CPAにとっての)「家」である香港が収めてきた成功こそ、香港の精神によるもの である。」

というもののようだ。またこの機体には香港島の高層ビルが描かれているが、これは 更なる発展を目指して高まる香港の人々の意気込みと功績を表している、という。
「繁栄進歩 更創新高」という言葉はそれを表しているのだろう。実にいい言葉だ。 最近、ANAがスヌーピーやポケモンの飛行機を飛ばしてヒットしているが、そんなの よりずっといい(ANAは前にマリンジャンボを飛ばしたが、あれはすごく良いデザイ ンだと思う。センスも良いし。国際線にもポケモンが進出しているようだが、マリン ジャンボを飛ばした方が良かったと思う。でも、国内のみならず海外に飛ばして世界 の人々にも楽しんでもらおうとした姿勢は評価できる)。

で、しばらく私はCX460のゲートそばでこの「家」号の出発を見送ることにした。 B-HIB 「家」号は牽引車に引かれ、誘導路へと向かった。残念ながらゲートから滑走 路は見えないので離陸は見られなかったものの、「家」号が見えなくなるまでずっと 外を眺めていた。

他にもこの日のHKGは波乱があったらしく、本当は夜出発のはずのCPAのチューリッヒ 便が朝まで延びたらしく、ゲートには「CX291D」となっている。便名にアルファベッ トが付くのは訓練用やフェリーフライトなどの他、特別な場合なのだそうだが、遅延 もそのうちに入るようで、「D」は「Delay」そのものである。普段の数十分の遅れぐ らいで便名に「D」などつかないから、よほどのことだったのだろう。フライトキャ ンセルにならないだけ良かったかもしれないが、乗客もクルーもいつ飛ぶか、いつ飛 ぶか気になっていだだろうし、大変だったに違いない。

註:CPAは現在ではチューリッヒ線は運航していない。

CPAの日本行きの便が出発する頃になると、日本人観光客がゲートに集まり出す。 早い順から東京行504便、450便(TPE経由)、名古屋行532便、大阪行506便となるが、 CX506は午前便の中では11時出発と晩生(おくて)である。CX504の9時55分から2時間ぐら いの間にこれだけあるのだから、かなり集中している。名古屋に行く女子大生と思 われるグループが「私達のゲートどこ?」「CX532はXXゲート」「あっ、こっち、こ っち」などとやっている。啓徳は狭い、汚いなどといわれるが、ゲートが集中してい るとこのような時に便利である。

いよいよ私達CX506の番がまわってきた。これでもう2度と啓徳に来ることはない。 この景色も見納めである。搭乗機は沖止めらしく、バスで移動することになる。搭 乗券の半券を受け取ると階段を下り、待合室でバスを待つ。CPAの職員もこのバスを 利用するのか、待合室にいた。

バスで移動した先は1機の747-400だった。塗装は新塗装版である。搭乗するとこれ が「薄汚れている」という印象を受けた。この飛行機のレジはB-HUJであるが、JPに よると95年製のようである。が、3年ばかり古いB-HOZよりも「汚れて」見えたのは 昼間だから目だってしまったのだろうか?

今回は3時間あまりしか時間がないとのことで、搭乗時にフライトログはお願いする ことにした。で、様子をうかがってそばにいたCAにメモを見せて説明すると、「あと で書いて持ってきます」とのことで受け付けてもらえなかった。確かに離陸前は彼女 達は忙しいので頼むのも無理があったかもしれないが、ここでごねるべき問題では ないので、いつもの通り、上空で頼むことにしよう(こういうのは上空だと忙しいの で、マナーとして搭乗時に頼むべきとの声もあるが)。

搭乗後、CAから挨拶も兼ねて機内設備の案内があった。これはいつものことであるが、 今回は新人か、それともおっちょこちょいだったのか、パーソナルTVがない機材なの にも関わらず、パーソナルTVについて触れてしまった。見ればすぐ気づくことだが。 きっと何かと混同してしまったのだろう。あがっていたのかな。

当機はどうやら出発が遅れるとのことらしい、とのことだったが、気がつくと1時間 ぐらい遅れたような気がする。ようやく出発の時を迎えた。

この日の私の席は68Gと最後尾。が、この便は比較的席に余裕があり、真中席が1列 あいていた。添乗員が真中席のうち、通路側にいたので自分もその席へ移動。少し お話をしていると、添乗員は何やらアンケートを書いている。話によるとツアー リーダーにそのアンケートがまわってきて、抽選でCPAの航空券がもらえるらしい。 機内誌を見ると「乗客の中から無作為で選んだアンケート」とあるので、多分それ だろう。自分もやってみたかったが、これは運なので仕方がない。私が航空ファン だと知った添乗員はアンケートを書くのに使ったCPAのボールペンをくれた。普通の ボールペンなのであるが、飛行機に乗って、かつ運が良くないとなかなか手に入らな いものであることを考えると貴重なものかもしれない。もったいない気がしてなかな か使えないが、使わないとインクが出なくなるので、気分によって愛用している。
なお、この便にはCPAの上役のような職員も搭乗しており、アンケートを回収して歩い ていた。

更に、添乗員は「これどうぞ」とシステム手帳までくれた。これはCPAとは関係なく、 中国語版の手帳であった。これはあまりにも悪いので「これ、いただいていいんです か?」と聞くと、「自分はもう持っているから」が、とのこと。前からシステム手帳 は欲しかったが、高くて買う気がしなかっただけに非常に嬉しかった。でも、これも 貴重でなかなか使うのももったいない。ようやく少し使い始めたが、どう使おうか悩 んでいる。紙だけ入れ換えて使おうか。

イタリア滞在中の疲れとロングフライトで興奮していた体、それに時差も手伝って 疲労度はピークに達していた。おまけに啓徳でまた歩き回ったこともある。とにかく 眠い

フライトログの件はしばらく待ったが、例のCAは何も連絡してこない。多分忘れてい るのだろう。で、直接ギャレーに行って、捕まえたCAに事情を説明して依頼すること にした。彼女達も忙しいのでかなり抵抗はあったが。
すると、日本語を話すCAが出てきて応じてくれることになった。名札を見ると 「E」とある。日本人でなくてもかなり流暢な日本語だ。その後、E氏と少し お話をすることになった。

E:「香港のご旅行はいかがでしたか?」
A:「いや、香港はトランジットだったんですよ。実はローマへ行きましてね。 今朝、お宅の292便で香港に着いたんですよ。」
E:「あぁ、そうですか。ローマはいかがでしたか?」
A:「よかったですよ。」

とこんな具合である。が、彼女達も忙しいのでそんなに長話はできない。それにして もCPAはどの便でもこんな感じに気軽に話しかけてくれるCAがよくいるな、と思う。

イタリア滞在中の疲れとロングフライトで興奮した体、啓徳で歩き回った上に時差も 手伝って、疲労度はピークに達していた。もったいないとは思っても、何もしなくて もまぶた同士が仲良しになってしまう。添乗員も眠っていることもあり、機内食を食 べ、その後は死んだように最後尾席で「爆睡」。横1列の席が空いていたので、エコ ノミーといえどもかなり快適な睡眠を取ることができた。この席は喫煙席で、タバコ の煙もやってくるが、おかまいなし。眠り続けた。フライトログを持ってきてくれて も、添乗員に指摘されるまで全然気づかなかった。

CAが検疫の質問票を持ってきてくれた。これには便名を記載する欄があるが、ここに しっかりと「CX292」と書いてしまって、添乗員に「便名、292便と間違えそうになり ますね」。私にとっては292便の夢の続きを見ていたのだろう。

戻ってきたフライトログを見ると、時間がない中でよくやってくれたと思う。 今回利用したCPAのどの便でも、サービス自体も手抜かりがあった訳ではなかった上、 このような客の「わがまま」にもしっかり、いやそれ以上の答えを出してくれたこと から、今回のCPAのフライトはCAには非常に恵まれていたなと思う。

最後は空いている席まで利用して眠りふけ、気がついたらKIX到着という。飛行機の中 でこんなに眠ったのは今回が初めてだ。どんなに疲れていても、どんなに眠くても私は 飛行機の中で寝る気になれなかったのだが、今回だけは特別だった。限界に達していた。 そしてこれは国内線でも続き、KIXから羽田へ向かう便の中でも死んだように眠り続け たのである。 そのうちに高度を下げ、KIX到着。入国手続きを済ませ、荷物を受け取った後、お世話に なった添乗員や大阪解散のツアー参加者と別れ、最後のレグであるNH146に備えること になる。

その後、香港に新空港ができた時、CPAは新空港開港記念ということで、ニューヨーク から香港までノンストップ便を飛ばした(通常はバンクーバー経由)。おまけに新空港 に1番乗り!この飛行機は「Polar One」と名付けられ、北極点経由のルートが取られ たが、その時に使われた機材がこのB-HUJだという。後で考えてみれば、このような記 念すべき便に使われた機材に搭乗できたということは、それだけでも貴重なことだっ たのかもしれない。


航空旅行記目次
(2)1998年 イタリア(6/8)
(2)1998年 イタリア(8/8)