2001年 シンガポール(4/8)

第1日目

チャンギ脱出

成田から約11時間の旅を終え、搭乗機B-HNIを降りた。チャンギではこのフライト だから、と特に変わらず。今まで乗って来たシンガポール関連のフライトと同じく、 バスでなくボーディングブリッジからの降機だった。出口のところには、バッゲージ クレイムの番号が表示されていた。

いつもだと、搭乗機から「吐き出された」乗客達の群れはすぐには掃けないが、こ の日、777-300から出て来た人達はあっという間にターミナルビルの消えてしまった。 日本を真夏に出たこともあって、3月、そして99年2月来訪の時に味わったムッとし た蒸し暑さは感じなかった。

私にはチャンギに着いて、入国審査前にまずやっておくべきことがあった。それは、 空港案内図をgetし、Orchard Roadまでの行き方を確認することだった。Orchard Roadまで出れば、そこは以前来たところ。ホテルまでは何とかなる。今年中に地下鉄 がチャンギに乗り入れる、という話だったようだが、いつの話なのだろうか。自分 の来訪に間に合って欲しかったが...そう甘くはなかった。

3月のチャンギ来訪の際、案内図を既に貰い、36番のバスがOrchard Roadまで行くこ とはわかっていた。が、この情報はしょっちゅう変わるらしいので、現地で最新情報 を確認しておきたい。

この案内図はトランジットエリアにあるので、このエリアを探したが... ところが、場所が悪かったせいか、至るところに置かれているパンフ置場にもない! おかしい。確かに見たのに。これがないと、私は困る!まず、イミグレへ降りるエ スカレーターそばのパンフ置場。シンガポールの観光案内ばかりだった。でも、何 か役に立つかもしれないので、しっかりget。

その後、T1のトランジットエリアを歩きまわったが、こういう時はなかなか見つから ないもの。でも、自分の到着便はCX2073となっているし、あまり長居すると入国審査 の時に怪しまれるのではないか。早く見つけないとヤバい、と思っていた時、やっと 案内図を見つけた。この案内図、各国語版があるが、ここでは英語版数冊、日本語版 1冊、中国語版数冊ぐらいしかなかった。これで、イミグレへ行ける。

エスカレーターを降り、イミグレに行く。この時間帯はフライトが少ないせいなのか。 私が行った時には「外国人」のエリアは閑散としていた。「シンガポーリアン」の ところにもあまり人はいなかったような気がする。CX2073(と思われる)の乗客はもう 誰もいなかった。

海外渡航者は必ず1度は通らなくてはならない関門。いつもこの時になるとドキドキ する。前は何も聞かれなかったが、あの時は真夜中だったので何も聞かれなかったが、 今回は朝だし、暇そうにしているので何か言われるのではないか。ところが、係官に 書類を提出すると、パスポートのバーコードをなぞってスタンプを押しただけでおし まい。だいたい、滞在日数とか入国の目的などを聞いて来るものだろうが、そういえ ば、シンガポールの場合は、それらの質問事項は入国カードに全部書いてあるのだ。 怪しい人物とさえ思われなければ、何もわざわざ聞く必要はないはず。

あの時は、別に真夜中だったから手を抜いた、という訳ではなかったのだろう。 逆にそんなことがあった方がヤバいような気がする。怪しい人物がいつ入って来ると も限らないし。

ちなみに、例の案内図はイミグレ周辺にもちゃんとあった!しかも、ここは全バージ ョン揃っていた。何も、トランジットエリアで探しまわる必要はなかった。

あっけなく簡単に審査は済んだ。その後、乗客はバッゲージクレイムで手荷物を受け 取ることになるが、自分は何も預けていないので、通過。

今度は税関である。ここも乗客の自主申告によるものだが、確か、「申告あり」と 「なし」に分かれていたと思った。申告する必要のあるものは何も持っていない。 「なし」のゲートを通って、これもそれでおしまい。

これでようやく入国できたが、今回のシンガポール旅行最大の難関、市街までどう やって行くのか、という点が現実問題になってしまった。これは、イミグレよりド キドキする。ロンドンなら勝手はわかってはいるし、地下鉄という強い味方がある が、ここにはそのような便利なものは現状、ない。

いくらシンガポールに1度は来たことがある、とはいえ、あの時はツアーだったので 係員のお出迎えがあったが、今回は当然、自力で街で出なくてはならない。ここには、 ロンドンの地下鉄のようにわかりやすくて便利な空港アクセス手段がないので、どう しても市街から空港にアクセスしようと思ったら、タクシー、シャトルバス、バスと いった交通手段を使うしかない。99年の来訪の時はとにかくシンガポールは初めてだ ったし、時間もろくになかった。LHRのように滞在中にわざわざ機会を作ってまで行く、 という目玉スポットがここチャンギには見当たらなかったので、空港までのアクセス 手段に習熟する機会など全くなかったのである。そんな状態で個人旅行など、無謀だ ったのか。

それはともかく、まずシンガポールドルを入手しなくてはならない。そうしないと、 町中へ出られない。税関を出たところに両替屋があったので、手持ちの日本円を換え てもらう。今回は買物もするので3万円を換えてもらった。多分、これだけあれば あのバティック生地を買っても足りると思うが。 お客がいないせいか、両替屋にいた2人ばかりの女性職員はだべりながら何やら油で 揚げたフライ状のものを食べていた。いきなりのお客さんに彼女達のおしゃべりタイ ムも中断。この両替屋、バッゲージクレイム側にも受付があったので、そちらでゴソ ゴソやった後、お金が出てきた。

いつもならだいたい小銭も混ざって出て来るが、今回は何故か小銭が全然ない。シン ガポールのバスは釣り銭を出してくれないので、これでは困る。市街までのバス代は $1.50だが、一番細かいのでも$2札しかない。また、日本のように両替機もないので、 どうしてもここで小銭を調達する必要がある。

実はもしかしたら使えるかもしれない、と思い、99年の時に余った小銭を持ってきて おいた。調べてみたら、バス代の$1.50分はきちんとあった。しかし、だいぶ前の話 なので、この小銭が今でも使えるかどうか自信がなかった。もしかしたら通貨のデザ インが変わってしまって、今はもう使えないのではないか。だから、ここで今使われ ている小銭が欲しかった。

私は「細かいのはないの?」と両替屋に言ったが、言い方が悪かったのか。彼女達は 機嫌悪そうに$2札を指して、「細かいのならここにある」というばかり。おしゃべり タイムを中断されたのがよほど気に入らなかったのか。ここで、「バスに乗りたいか ら小銭が欲しい」というべきだった。これは正当なクレームだから。

バス停は地下ターミナルにあるが、ここにはコンビニがあることがわかった。ここで 滞在中に必要な飲料水を購入すれば、小銭が作れるかもしれない。そう思い、行って みたが、何と開店時間前。確か、10時過ぎ頃から営業だったか。これではどうしよう もない。

しばらくどうしようかとバス停あたり、ターミナル周辺をうろついていた。 そういえば、バッゲージクレイム出口付近にBurger Kingがあった。幸い、ここは今の 時間でも営業している。最後の手段でここで入手するしかない。だからといって、ただ 両替だけを頼んでもやってくれないだろう。特に食べたいものはなかったが、あの機内 食は朝食にしては早すぎるので、お昼までおなかがもつかどうかわからない。ここで何 か食べていこう。

何を食べようか、と思い、メニューを見てしばらく考えたが、どうも自分の食べたい ものが見つからない。しかも、$1と$50分の小銭がうまく作れるようにしなければなら ないから、選択が非常に難しい。シンガポール限定のチキンバーガーが何とか妥協で きるもののようだ。そう思い、注文したところ、今は朝メニューしか扱っていないの だそうだ。マックと同じである。朝メニューも特に食べたいものはないが、エッグマ フィン(だったと思う)を選択。釣り銭を貰う時に「バスに乗りたいので、細かい釣り 銭が欲しい」と言ってみた。すると、店員は「Change?」と言いながら、$1や¢50だけ でなく、¢10など様々な小額通貨を用意してくれた。やはり、「バスに乗りたい」と 言ってみるものである。助かった。Burger Kingの店員には何の責任もないが、この 面倒な要求に対し、嫌な顔せず対応してくれたことに感謝する。

さて、このエッグマフィンセットにはジュース、フライドポテトが付いてきたが、や はり食べたいと思うものじゃなかった。マフィンもポテトも油っこくて、おいしいも のではない。だが、おなかも空いているので、無理に喉に押し込んだが。だが、ジュ ースだけは冷たくて甘く、おいしかった。

ようやくバスに乗るだけの小銭が確保できたので、バス停に行く。Orchard Roadに行 くバスはNo.36だったが、日本のバスのように車内放送というものがない。降りる時は ブザーを押して知らせる、というのは日本と変わりはないが。ということは、常に辺 りの風景や止まったバス停に気を遣っていて、降りたいと思うバス停に近付いたらブ ザーを押さなくてはならない。これは土地勘のない旅行者には苛酷なことだ。Orchard までたどり着けば、少しは感覚があるが、そこに着くまでは全く土地勘がない。困っ た。だからといって、タクシーは不安だし、エアポートシャトルは行きはいいものの、 また空港へ戻って来る時は予約を入れなければならないし、しかも高い。帰りはチャ ンギというわかりやすい場所で降りるのだから、わざわざ面倒臭い、気を遣うエアポ ートシャトルに乗る必要はない。それでは、帰りの下見ができなくなる。下見のでき ないまま慣れない交通機関を利用するのは非常に不安だ。だから、バスに乗らなくて はならない。

そうはいっても、やはり海外で市バスに乗るのは不安だ。No.36に乗る乗客にOrchard Roadに着いたら教えてくれ、と頼むしかない。運転手に頼んだ方が確実だろうが、そ んなことは思いも付かなかった。怪しい人に当たるのも気になるが、ここは賭けだ。 多分、怪しい人には当たらないだろう。そうなることを願って。

まずは、現地人より自分と同じ境遇の旅行者なら怪しい確率は低い筈。とはいっても、 旅行客は全くいない。勿論、日本人も全くいない。どうも、この時間は航空旅客は少 ないのか?CX2073の到着からだいぶ時間が経っていたし、私が空港から出てきた時も 到着便の案内にはいくつか出ていたので、こんなに航空旅客が少ない筈はないだろう。 もしかしたら、旅行者は市バスなど使わず、タクシーやエアポートシャトルを使うの か?

バス停に、バックパッカー風の西洋人カップルがやってきた。彼らはQFのバッゲージ タグを付けていた。恐らく、欧州かオーストラリアからの航空旅客だろう。まず、彼 らにOrchard Roadまで行くか、と聞いたところ、途中で降りる、という。これでは教 えてもらえない。

旅行者ばかりを当てにできないので、怪しくなさそうな地元の人間に聞くしかないだ ろう。今度は、中年に入ったくらい(?)のおばさんがやってきた。イスラム教徒なの だろうか。頬かむりをして、顔だけ出している、という独特のスタイルをしている。 彼女に助けを求めたところ、「OK」と快諾してくれた。 彼女と一緒にバスに乗り込む。バスは前金制で、現金払いの場合、運転手にお金を払 うとそばの自動発券機でレシートをくれる、というシステム。フェアカードというプ リペイドカードでも支払ができ、その場合は直接発券機に挿入して運賃ボタンを押し、 レシートを受け取る。彼女を含め、現地の人達はフェアカードで支払っている。自分 が今回バスを利用した時は、旅行者がいなかったせいか、皆、このフェアカードを使 っていた。ちなみに、フェアカードで払うと¢10安いのだそうだ。厚木の神奈中でも フェアカードに相当するバスカードはかなり普及していて、バスカードで乗り降りす る利用者は多いが、現金払いする人も意外といる。しかし、シンガポールでは私の見 た限りではまず、このフェアカードで、現金払いする人などまずいなかった。だから、 バスの中に両替機がなくても一向に困ることはないのかもしれない。

彼女の隣に座ろうとしたが、荷物があるので前の空いた席に座ったら、という。 一応は了承は貰えたが、果たしてちゃんと教えてくれるのか。また、何かされるので はないか。彼女がそんなことをするとは信じたくないが、やはり不安は拭い去れなか った。

当然、市バスなのであちこちの停留所から乗客を集めて来る。チャンギを出た時には 余裕があった車内も、通勤、通学客で一杯になってくる。とはいっても、いつもの通 勤時間帯に経験するバスのラッシュから比べれば、まだましだったが。

彼女はこの異邦人に対し、いくつか質問をしてきた。外国人には興味がある、という のは世界共通なのかもしれない。また、この質問のお蔭で、少しは場が和んだかもし れない。私も同じような立場、または旅行者通しで会話する時は、まずこの手の質問 はするだろう。

「どこから来たの?」
「日本からです。」
「では、Japan Air Lines, JLで到着したのかな?」
「いいえ、Cathay Pacificの便です。」
「キャセイね。それじゃ、CXで。」
「はい。CX2073で来ました。」
「ホテルはどちらへ?」
「Crown Princeです」

自分の知合い、今まで旅先で出会って来た人達も含め、旅の話をする時は、こちらか ら聞かない限り、利用航空会社について話題になることは比較的少なかったと思う。 それにしても、普通の人ならあまり使われないだろうIATAコードがこうして何気ない 会話の中に出てくるところが何か凄い。日本では日航をアルファベットで略すとした ら、まずJALだ。JLよりもJALの方が良く知られていると思うが、海外では違うのか? JLというコードはあまり一般的でないような気がする。もしかしたら、彼女は空港か 航空会社の職員なのだろうか?

バスの前方にはテレビがあり、病院の待合室のテレビが1しかついていないのと同じ ように、かかっているチャンネルは固定されているが、一応はテレビが見られるよう にはなっている。長距離路線ならともかく、そんなに長い距離を乗ることのない市バ スでテレビが必要なのか、とも思ってしまうが、日本にはないだけに、何か新鮮さを 感じる。漫画もかかっていた。

それから、シンガポールの地図やガイドブックは持ってるか、ということになった。 そして、それがあったら見せてくれ、という。自分は地図やガイドブックは持ち込ん でいたが、念のために日本語ではなく、99年に貰った地図を渡すことにした。 場所がわからず、そわそわしている自分を見て、彼女は「着いたら教えてあげるから、 大丈夫」とは言ってくれたものの、やはり落ち着かない。

地図を渡すと、彼女は、「ここはXX通りだよ」とか、いろいろと教えてくれる。 だが、自分は後向きであるし、すぐに通りすぎてしまうので、折角教えてくれてもな かなか頭に入らない。やっぱり、道を覚えるには自分の足で歩いて、場所を確認しな いとそう頭には入らないものだろう。あの血債の塔もバスの通過地点で見ることがで きた。

また、今回はバスの通過点の至るところでシンガポールの国旗を掲げる家やビル、シ ョッピングセンターなどを見かけた。何事だろう、と思っていたが、彼女は「National Day」と教えてくれた。これらの国旗で溢れている街を見て、どうやら国民の祝日らし いことは想像がついたが、その時は何のことだか全くわからなかった。日本でも、 祝日には国旗を掲げましょう、という呼びかけもあるらしいが、「日の丸」が持って いる様々な経緯から実際に掲揚する場所は限られている。
「National Day」の意味はOrchard到着後、町中に出ている横断幕でやっとわかった。 つまり、独立記念日、ということだった。

目的地が近付いて来た。今まで見た場所と雰囲気が違っていたので、気がつかなかった ところ、彼女が「早くボタンを押して」という。そう言ってから一瞬のうち、バスは Orchard Roadに入っていた。前に見た見覚えのある雰囲気だ。すると、バスは停留所に 止まった。きちんとお礼を言いたかったが、すぐにバスが発車するので、大慌てでバス を降りざるおうえなかった。バスが発車した後、彼女は手を振ってくれた。自分も彼女 の姿を見送ることになった。最初は何か怪しそうな感じもあったが、親切でいい人だっ た。やはり、勇気を出して声をかけて良かった。彼女のお蔭で、本当に助かった。感謝 したい。これでまた、土地勘を養うことができたのだから。あるWebページの作者は

「私達個人旅行者は、どこの国にいっても、地元の人達に支えられて過ごしている。 そして、絶えずそのサポートを意識しながら旅を続けているのだ」

と言っているが、今回のこの件はそれを実感するものだったと思う。 チャンギからここまでの所要時間は約1時間。

なお、帰りのバス停について彼女に確認したところ、来た時と同じバス停からNo.36の バスに乗ればいいのだそうだ。日本のバス停のように、行きと帰りとでバス停の場所が 違うことはないそうだ。ちなみに、このNo.36のバスは循環系統なのだそうだ。しかも 回り方も一方通行のようだ。だから、何回りはどうとか、悩む必要もなさそうだ。

バス停はOrchard Parade Hotelの反対側にあるDELPHI Orchard Shopping Centre前に ある。空港行きバスとはいえども、普通の市バスのバス停と全く変わりはない。 近くにはAFの営業所もある。これは、前に来た通りだ。これなら、大丈夫だ。

Orchard Roadに到着したのは確か、10時頃だったか。まずは、ホテルの場所を確認し ておきたい。バスの進行方向に向かってしばらく歩いたが、思ったより距離がある。 通り沿いにあるためか、場所は非常にわかりやすい。しかも、どの観光地図にも出て いるので、特徴は簡単にインプットできる。Paragon Shopping Centreのそばだった。 通り沿いにはカフェテラスがあって、すぐにホテルとはわからないが、Paragon Shopping Centreの脇にあるBidetor Roadに少し入ったところに正面入り口はあった。 車止めなどもあって、如何にもホテル、という感じの場所だ。N氏は「普段着で 入っても大丈夫」と言っていたが、リュック姿で入れるのかな、と一瞬感じてしまう。

また、副産物としてSQオフィスもこのParagonで見つけることができた。Webページで、 高島屋そばのParagonビルの2FにSQのサービスセンターがあって、そこには各種展示 物がある、という記事を目にしたことがある。航空会社の支店自体は、そこに用がな い限り、なかなか入りにくい雰囲気のところだが、この「各種展示物」というのには、 興味津津だった。もしかしたら、SQという会社についての貴重な情報が何か得られる のではないか。歴史的資料とかあるのではないか。幸いにおして、今回のシンガポー ル渡航前にこの情報が得られたので、機会があればどんなところか覗いて見たかった。

今回は日本では手に入らないとされているワールドワイド版の時刻表も手に入 れるのも目的だった。これで、チャンギでT2まで行って時刻表を探さなくて済む。ホ テルの真ん前、という、申し分のないロケーションだ。SQオフィスはビルの2F窓の部分に大きく宣伝を出しているので、一目でわかります。お約束のCAの写真、そして世界地図が出ています。

荷物を預けたかったが、一応はチェックイン開始は15時からである。それまで時間を どうやって潰そうか。いくら朝から時間を使える、といっても、長旅で体も疲れてい る。時間は明日、明後日とたっぷりあるし、無理して遠出する必要もないだろう。

SQバティックをGET! @ Lucky Plaza

こんな訳で、まず1日目は今回の旅の1番の目的、SQバティックの生地&グッズ探し に当てることにした。グッズは土産物を扱う店ならどこにでもある。しかし、生地、 というのはなかなか見つからない。99年の来訪の時は、確か、Lucky Plazaで見つけ たと思われたことから、Lucky Plazaを中心に探すことにした。

Lucky Plazaは中国系の店のようで、ここはいつ行ってもタイライスとも何とも言え ない、鼻につく匂いがする。臭い。それにしても、あの匂いは一体何なのだろう。 臭いものの、中は雑貨、電気屋、鞄屋などあらゆる小さな店が密集していて、見て いて結構面白い。

本題のSQバティックグッズを扱う店も多かった。が、目的の生地だけ、となると、な かなか見つからない。一通り探して見たが、やはりなかった。あの時は、確か、切り 売りで扱ってたような気がしたが...もはや、切り売りで扱う店は見つからなかった。 圧倒的に多いのは、グッズとSQの制服のレプリカだった。自分自身も買ってしまった が、グッズはともかく、制服のレプリカは使い道があまりないのでは、と思ってしま うが。日本ではまず、外には着て行けない。部屋着にしても、深いスリットは入って いるものの、スカートの裾があまり広がらないので歩きにくいし、くつろげない。 デザイン的にはいいが、実用的には?である。

それにしても、このSQバティックグッズ、制服のレプリカやポーチ、といった前から 知られていたもの以外にも、実に種類が多い。傘、スカーフ、ハンカチ、巾着、バッ グ、帽子、扇子、とあらゆる種類がある。現地人でこのデザイングッズを使う人はい ないが、あらゆるシンガポールの御土産にこのデザインが入っていることから、どう やらこの柄はシンガポールを代表するデザインのようだ。

生地はないのか、と諦めていたところ、ある中国系の土産物屋が扱っていることが判 明した。その土産物屋に入ったところ、切り売りではないが、1m * 2.5mの単位で売ら れている。値段を聞いたところ、1単位$18。値札を見ると$35とある。これは、何、 と聞くと、ディスカウントしたから、この価格が正しい、という。特に安くはないが、 この生地を買わないと目的は達成できない。色は赤、緑、紺と、SQの制服の色と同じ ようにある。代表的な紺2単位と緑2単位を購入した。沢山買った、ということで、 端数の$2はおまけしてくれた。

最初は英語でいろいろ話をしていたものの、ここの店員は日本語OKだという。最後は 日本語で話をしていた。また、私の前に女性の日本人観光客がマーライオングッズを 知人のお土産に、と沢山買っていたが、「いつ、お帰りで」などと日本語で会話して いた。

店員によれば、このSQバティックのデザインはシンガポールの伝統的なデザインだと いう。SQの制服に使われているのも、そんな訳だったのか(*)。

(*)註:SQバティック、といっても、厳密には市販されているものと実際の制服とでは柄は異なります。

旅の第1目的を達成し、満足した私はその後、Orchard Roadの店をまわっていたが、 長旅の疲れはピークに達していたようで、足腰が痛くなってきた。とはいっても、 ホテルのチェックイン時間までまだある。あまり長居できるような場所ではないも のの、高島屋のショッピングモールにあるベンチでしばらく休憩していた。 後は、周辺のショッピング街をうろついたり、疲れたらベンチで休む、ということを 繰り返し、チェックイン開始を待った。

前にも話題になったParagonのSQオフィスも勿論行った。ガイドブックによれば、 Paragonビルは「一流ブランドのブティックが集まっている」のだそうだが、今回の 旅行では縁のない店ばかりだ。ブティック以外のデパートもあるので行ってみたが、 特に欲しいものは見当たらない。が、ここは日本のデパートと同じような感覚で買物 ができそうなので、洋服などをチェックするには候補としてはいいかもしれない。 エスカレーターのそばに出店している店のリストがあったが、ここにしっかりとロゴ 入りで「SINGAPORE AIRLINES」とある。間違いない。

エスカレーターを昇り、振りかえるとSQオフィスは目の前にある。入り口にはドアは なく、自由に中に出入りできる。入口には受付があり、わからない場合は、ここで相談 できるようになっている。入り口のそばの壁面には誰でも自由に触れるPCが3台埋め込 まれている。顧客はこれらのPCでSQのWebサイトを自由に閲覧できるようになっており、 フライトスケジュールの参照は勿論、予約やFFPのマイル数チェックなど、あらゆるこ とができるようになっている。予約自体は可能かどうかは不明。また、この壁には自動 チェックイン機も埋め込まれており、ATB券を持っている人はここで自動チェックイン もできるようになっている。Webページで話題になった「各種展示」については、入り 口にFクラスの椅子があったのと、中に何やらあるみたいだが、入り口に人がいるので、 ちょっと入りにくい。中にいる人達はSQに用があった人達ばかりで、私のような人はい そうもない。それはそうだろう。このようなところを覗いてみよう、と思うのは航空フ ァンくらいしかいないから。

とりあえず、受付に人がいたので、「時刻表はあるか?」と聞くと、「Of Course」と 言って持って来てくれた。当然のことながら、ワールドワイド版である。どうしてこれ が日本のSQにないのかが疑問だ。もし、再び有楽町のSQオフィスを訪ねる機会ができた ら、1度は聞いてみるべきかもしれない。案外、持ってたりして。

ちなみに有楽町のCXには日本語版と一緒にちゃんと、ワールドワイド版も置いてあっ て、自由に持ち帰れるようになっている。航空会社の「カタログ」である時刻表はや はり、こうであって欲しい。

し、しまった!!

15時にはまだなっていなかったが、一応は行ってみよう、と思い、Paragonビルのベン チを出ようとしたところ、ハンドバックの底がほつれているのに気づいた。底は二重 構造になっているが、1枚目だけが切れていたので、2枚目のお蔭で中身は全て無事 だったが、この中には貴重品がいっぱい入っているので、底が切れていたことを考え るとゾッとする。恐らく、今までの旅行では機内誌やノートなど、重みのあるものも いろいろ入れていたし、そのために底がほつれてきたのだろう。このまま使うことも できなくもないが、いつ底が切れるか心配して使うのも嫌だ。この中身が失われるこ とによる物理的、精神的ダメージははかりしれない。ここで、新しいバックを購入し、 今までのバックは捨てて行くのがベストだろう。痛い出費だが。

とはいっても、周辺の店は高級な店ばかりで、手軽に買えるような店はない。その手 の店は、やはりLucky Plazaか。長旅の疲れも忘れ、慌ててLucky Plazaに戻る羽目に なってしまった。

とりあえずは数件、鞄屋を覗いたが、スーツケース以外の鞄は値段が出ていない。値 段がわからないと検討できないではないか。店に入って商品を手に取っていると、店 員が「どう?何をお探しで。」とやってくるし。こっちは、静かに商品の見定めをし たいのに、すごくうざったい。最初の一言、二言ならどこでもある話だが、「どうで しょ。負けておきますよ」とか、それも、しつこい。どの店もそうだ。必要な時には 声をかけるから、黙っててくれ、と思うが、中国系の商人にはそれができないのか。 第一、値段を出さないのも気に入らない。

最初に入った店でそれをやられたので、「また来ます」とか言いながら逃げてしまっ た。次に入った店では厚かましい店員はいなかったものの、自分がまあ、使えるだろ う、と思った鞄は高かったので、止めた。この店では、西洋人旅行者がスーツケース を購入しようと、価格交渉をしていた。

そして、次に入った店は品揃えはなかなか良さそうだ。ベネトンのバッグ$19などと ある。どれがいいかな、と見ていると、またもや厚かましい店員がやってきて、「何 がいい?」と言ってくる。嫌気がさすが、とりあえず、値段を聞くと、(約)$50だとい う。どれも高いものばかりだ。日本では場合によっては¥1000で買えるかもしれない。 「ただ、見てるだけだ」と言っても、一向に引く気配はない。

不満げな顔をしていると、「まけるから」と案の定言い出した。しかし、彼が言う値 段はどれも予算を大幅にオーバーしてしまうので、納得はできない。例のベネトンの 鞄を見て、どうしようか、という顔をしていると、「これ、ベネトンだから」といっ てくる。

まあ、いいかな、と思って候補にしていた鞄はこれも最初、$50ぐらいだと言ったが、 渋り顔をしていると、どんどん値段を下げていった。「これも出血サービスなんだと」 と泣く仕草をするが、納得できないものにはお金を払いたくない。1度捕まえた獲物 は放さない、と言わんばかりの彼の執念ははっきりいって、恐ろしいぐらいだ。この しぶとさに私も参った。どうしても必要な物だし、ここで買うしかないだろう。

彼は、「いくらなら買うんだ。」と電卓を出して、そこに希望価格を入力しろ、と言 う。はっきり言って、怖い。一応は自分の予算である$20を入力すると、それはダメ。 最終価格は$30にするが、どうだ、という。これ以上はまけられない。やはり、この くらいが相場なのか。仕方がない。ここで妥協した。まあ、これくらいなら妥協して もいい値段し、ここまで値切って買わないのも彼に失礼だろう。あまりいい気分では なかったが、ここで購入することにした。はっきり言って、非常に疲れた。ただ、お 金を出す時、他に持っていた紙幣が見えてしまったから、ここまで値切らせて嫌なイ メージを与えてしまったか、とも思ってしまったが。

前の店でも値段が出ておらず、値引き交渉をさせようとしたところから、このエリア には定価というものがあっても、それはあくまでも形式的な物で、売り手の言い値。 実際の価格は交渉によって決める、というのがここ、Lucky Plazaの一般的な商売の 方法なのかもしれない。日本では定価があって、よほどのことがない限り値引きはし ないところが一般的だ。その商習慣に慣れてしまっている私にとって、このLucky Plazaでの経験は非常に神経をすり減らすものだった。

そういえば、以前、家族で香港を訪ねた時、宝石店で「ショーウインドウに出ている 価格はあくまでも言い値。実際の価格は売り手との交渉で決まる」というガイドの案 内があり、実際そうだったが、それと同じである。 でも、このような商習慣で商売している、ということがわかれば、今度買物する時に 心構えができる。そういうことでは勉強になったかもしれない。

Crown Prince

バックの件で15時まであと十分余りになった。丁度良い具合だ。ホテルへ行って、 チェックインを行った。高級ホテルらしく、非常にきれいなロビーだ。今回、初めて 知ったが、ここ、Crown Princeは日本のプリンスホテルの系列だという。普通なら英 語で書かなければならない宿泊者カードの住所も、漢字で書いてくれ、というし、カ ードキーを入れる袋にも日本語が書いてある。宿泊者カードの住所を日本語で書ける、 というのは英語式の住所になれていない日本人にとって、非常に楽になるだろう。

それから、今までにはなかったデポジットとして、クレジットカードの提示を求めら れた。よく、海外では宿泊の際にクレジットカードが要求される、と聞くが、今まで は97年の出張以外、このような要求がされたことがなかった。初めて個人旅行をした ロンドンでも言われることはなかったが、そこは小さなホテルだからだったからか。 やはり、海外へ行くならクレジットカードは必須アイテムかもしれない。

チェックインが終り、部屋番号が割り当てられた。769号室である。高級ホテルでは あるが、ポーターなどはいなく、自分で部屋を探して行くことになる。そもそも、ポ ーターに持ってもらうものなど何もないし、変に気を遣わなくて済むので、この方が 精神衛生上、ずっといい。もしかしたら、ポーターがいるのでは、、そして、チップ のことを考える必要があるのでは、と思っていたが、その心配は御無用だった。また、 朝起きた時に枕元に置くチップについても、シンガポールではホテル代にサービス料 が含まれているので、不要だという。良いサービスを受けたと感じた場合は、渡すの は自由だそうだ。本来のチップの姿である。

部屋は海外では一般的な、ツインルームを1人で使う形。きれいだし、居心地は良さ そうだ。心配していたトイレの水も、ちゃんと流れた。鎖ではないが、二重ロックが できるようになっている。安心して泊まれる環境である。部屋の鍵はカード式で、 部屋に入る時はカード差入れ口に差し込んで抜くと、ランプがついて鍵は外れる。昔、 私はこのタイミングがわからず、いくらやっても鍵が開かず苦労した覚えがあるが、 今度はすぐにコツがわかった。

が、この快適な部屋にも1つだけ問題があった。スイッチを入れても部屋の照明がすぐ に消えてしまうのだった。これは大問題だ。昼間ならまだ我慢できるものの、夜に真っ 暗では何もできない。まさか、部屋の照明がすぐに消える、ということはありえない筈 だ。何かあるに違いない。いろいろと試してみたが、ダメだった。もし、本当にダメな らクレームをつけて部屋を換えてもらうなり、対処してもらわなくてはならない。

そう思ってドアのそばを見ると、壁に鍵の差入れスロットがあって、「鍵を入れてくだ さい」とあった。もしかしたら、この中に鍵を入れなくてはいけないのでは。まず、最 初は鍵を挿して引っ込めて様子を見たが、それでも消える。これは、照明を使う場合は 鍵を挿しっぱなしにしておけ、ということか?そうしてみたら、照明は消えなかった。 つまり、部屋の照明を使いたい場合は、ドアとなりの壁にあるスロットに鍵を挿しっぱ なしにしておけ、ということである。

荷物を広げた私は、ここで空腹を感じた。そういえば、朝から飲まず、食わずで歩き まわっていたのだった。そういえば、NRTで買ったアンパンとサッポロポテトがあった。 傷んでないかな、と気にもなったが、何も問題なし。

ヤ、ヤバい!!

荷物整理をしようと思った矢先、何か荷物が1つ足りないのに気づいた。しまった! 折角購入したバティック生地をどこかに置いて来てしまった!疲れていて、注意力 が散慢になっていたことに加え、壊れた鞄のことに気をとられていて、荷物の数の チェックに気がまわらなかった。パスポートや航空券などの「物理的な」貴重品、 これまで集めたフライトレコードという「精神的な」貴重品は無事だったが。パスポートなどがなくなれば、これからの行動 に致命的な支障をきたすし、フライトレコードはクルーの「善意」と思い出の固まり で、2度と再発行のできないもの。パスポートや航空券と同じぐらい、いや、場合に よってはそれ以上に大切なもの。だから、絶対になくしてはいけない。なくしたのは 購入した生地だけだったので、不幸とはいえ、少しは気が楽だったが。見つからなけ れば、また買えば済む話だが、折角買ったものなので、何とかして取り戻したかった。

これまで自分が通って来たところをいろいろと思い出してみる。まず、怪しいと思わ れるのがParagonビルとLucky Plazaだった。ここは、歩き疲れた私がしばらく休憩を 取っていたからだ。まず、Paragonを探し、Lucky Plazaの椅子を探すことにした。そ うでなければ、高島屋。それでも見つからなければ、諦めもつく。

疲れも忘れ、ホテルを出た自分はParagonで自分が座った椅子を探したが、ない。次は Lucky Plazaを探したところ、何やら黒い袋が放置されているのをみつけた。どうも、 見覚えのある袋だ。触って確認したが、間違いない。これだ!こうして、幸いにも生 地を無事取り戻すことができた。しばらく忘れていても、こうして無事に残っている、 ということで、改めてシンガポールは治安がいい、ということが感じられた。放置さ れていれば、なくなってしまいそうな気がするが。やっぱり、思った通り、壊れた 鞄に気を取られ、荷物のことを忘れていたようだ。このベンチ、確か、鞄を買いに来た 時に座った場所だもの。

ここで、教訓。旅行中は荷物は極力少なくまとめ、できれば鞄は身に付くものを使い、なるべく手ぶらでいるようにしましょう。特に海外では。いくら注意していたとしても、疲れた時に、どんな魔がさすか、わかりませんよ!そして、なるべく荷物は軽く!これは、鉄則にすべきでしょう。

生地を取り戻した私は、安心してホテルに戻った。ここで、一気に疲れがでてしまい、 しばらくはベッドでごろ寝してしまった。

海南鶏飯に御対面〜

そろそろ、日没も近くなるし、夕食のことが気になる時間帯になって来た。そういえ ば、今回、シンガポールに来たら是非、食べてみたいものに海南チキンライスがある。 これは、チキンスープでご飯をたきこんだもののようである。それに、骨付きの鶏が 添えてある。日本でチキンライスといえば、ケチャップで炒めたご飯のことを指すよ うだが、この変わったシンガポールのチキンライス、きっとおいしいことだろう。鶏 大好きな私にとっては、どんなものかトライしてみたい。

まず、その海南チキンライスが手軽に食べられる店があるのか、ということがよくわ からなかった。とりあえずは身近のParagonの地下にあるフードコートへ行ってみる。 中華料理屋が丁度、この海南チキンライスを扱っていた。値段も入り口に出ている。 少し入りにくい雰囲気もあったが、海南チキンライスが食べられる店である。ここに しよう。時間が早いせいか、店には客は誰もいなかった。 ウェイターがやってきて、注文をとるので、海南チキンライスを注文した。日本では 水のサービスがあるが、ここにはそのようなサービスはない。無難にオレンジジュース とした。

運ばれて来たチキンライスの味は、というと、当然のことながら、タイ米の匂いがある。 そして、香草か何かの匂いも結構強いようだ。ご飯の味は、期待したほどではなかった。 鶏肉は味付けはそう強くなく、鶏のモモの味がして、非常においしかった。
飲物のオレンジジュースは生ジュースで、粒粒の入ったもの。これは、実に旨い。 会計は確か$8だった。ご飯はあまり期待できなかったものの、そこそこに満足できる ものだった。

同じフロアにあるスーパーで飲料水を購入し、ホテルに帰った。500ml入りで¢40。 日本と比べたら、非常に安い。

やれやれ

部屋に戻った私は、シャワーを浴び、これで今日1日の予定は終了となる。この時期 のシンガポールの日没時刻は19時ぐらいだった。繁華街らしく、日没後も人通りは絶 えることはなかった。

それにしても、このシャワー、普通の水道とシャワーの切替えの方法がどうもわかり にくい。あちこちいじってみたが、なかなかシャワーモードにならず、何とか出てき た少ないシャワーの湯と水道からの湯を組み合わせて洗い流さなければならないのが つらいところ。私が海外のホテルに泊まると、必ず1つはこうした使い方わかりにく い施設があるものだ。うーん、困ったものだ。

明日はどうしようか。それでは、お休みなさい。


航空旅行記目次
2001年 シンガポール(3/8)
2001年 シンガポール(5/8)